会長様とプールの乱


「水泳の時には水泳帽を被るだろう。それにお前のハゲは一応隠れた場所にあるわけだし、そんな簡単には見えないだろ。水泳帽の着脱にだけ気をつけていればなんとかなる。お前は気にしすぎだ。それに……、」
「それに、何?」
「バレたとしても、俺がいるだろう?」

先程とは打って変わったニヤニヤとした笑みに、俺は瞬時にからかわれたことを悟った。一瞬、ほんの一瞬だけ本気に受け取った自身のなんとまあ恥ずかしいことか。

「たぁなぁまぁちぃー!!お前マジふざけんなこの男前タラシ野郎が!俺の純情弄びやがって」
「そりゃ悪かったな。でも全部が全部からかってた訳じゃねえよ。事実、俺はお前のハゲを知っても引かなかったろ?つまりはそういうことだ」
「あああ″あ″あ″あ″あ″あ″あムカつく!すっげえ敗北感あああああ」

まあまあ、と宥めてくる棚町を無視して俺は未だ手付かずだった飯へと手を伸ばした。それらは棚町がハゲに効くものを調べて調理したもので、味付けも俺好みに調節されている。

(美味しい……でもムカつくもんはムカつくぅうううぅううイケメンうぜぇええええ)

美味しい、けどムカつくという葛藤を抱えながらも、俺はガツガツ飯をかき込んでいく。
そんな様子を嬉しそうに見つめる視線があったなんて、このときの俺はやっぱり全く気づいてなかった。

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その後、ハゲがバレることなく無事プール開きを終えた俺は、こっそり棚町に礼を言いにいった。普段の夕飯の例も兼ね、菓子折りを持って。
そしてその状況を見事に新聞部に撮られ、親衛隊を巻き込んでの大問題になったのはまた別の話である。


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