会長様とプールの乱


嫌がらせかってくらい何度も繰り返されているこの単語、プール。この悪魔の書類が運んできた最悪の爆弾だ。そして、完璧な生徒会長様を演じきっているこの俺を恐怖させる原因でもある。
体育の授業に水泳が追加されるから、プール開きを行うだなんて……。

(プールとかまじうわぁああああぁあ!もうダメだ俺は死ぬしかない。これを期に俺は学園中の笑い物になるんだアハ、アハハハハハハ……先輩に殺される)

『生徒会長御笠玲二様、実はハゲだった?!』と銘打った学園新聞が舞う中、般若を背負った前会長に滅多うちにされる俺。そんな情景が一瞬でリアルに想像でき、背中につうっといやな汗が流れた。

「去年は水泳なんて授業なかったのにねぇ」
「なんで突然こんなこと思いついたんだろうね」
「本当にな。何で理事会の奴らは次から次へと新しいことをポンポン持ってくるんだか」

時坂、東雲、不知火が朗らかにプール開きの会話をしている中、俺はふかふかの執務椅子に身を預け、どうやってこの書類をもみ消し、禿げバレ回避、そして前会長からの制裁を回避するかに、必死で思考を巡らせた。

(いっそのこと、こいつ等にショックを与えて記憶を消すか?んでその後何事もなかったかのように書類は廃棄……。いやいや流石にそれはマズいだろ傷害罪だわつうかバレるわ。でもプールって確実に見えるじゃん。禿げが!丸見え隠せない!!うおおおおおおどうしたらいいんだ)

ひとり悶々と頭を抱えていると、生徒会室の扉が、コンコンと控えめにノックされた。

「どうぞ」
「失礼する」

東雲の声に従って扉を開いた人物を見た瞬間、思わずほっとしてしまったのはこの際気が付かなかったことにしよう。

(なんか、悔しいじゃないかそんなの)

「御笠、どうかしたのか」

入室早々まっすぐ俺の机の前まで来て、いかにも心配してますといった体で声をかけてくる男、風紀委員長棚町に、俺は無愛想に口を開いた。

「プール開きが、行われるらしい」
「プール開き?」
「ああ、理事会で決定したようでな。今年から体育の授業に水泳を追加するんだと」
「これがその書類だよ」


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