副会長様の場合


しかし本当の彼はとても優しい。そして表情豊か、だと思う。これはあくまでも僕の憶測にしかすぎないけれど。

(どっちでもいいか、僕か彼のこと好きなのに変わりはないし)


「今日はマドレーヌ?」
「正解」

ふんわりと香る甘い匂いに目線を上げると眼前にきらきらと眩い黄金色が広がった。次いで嫌みじゃない程度に施された装飾品達に、加工された制服が目に入る。
……不良だ。
ぱっと見は、不良。しかし不良然とした背格好に見合わない柔らかい笑み。
それが、生徒会最後のメンバー。書記の不知火黄金という人物だ。
見た目のせいで近寄りがたいと言われがちな彼だが、実際の彼はとてつもなくフランク。そして感受性豊か。
彼は絵画のコンクールで何度も賞を貰う程の腕前で、僕自身も実際に見せてもらったことがある。それはもう素晴らしくて、言葉がでなかった。
そして書記を務めるだけあって字も綺麗。力強くしなやか、でも繊細さもあって。彼の人間性がよく出ていると思う。

「好きだろ?」
「うん好き。ありがとうね」
「どういたしまして」

そう言葉を残して、他の役員達に彼はお手製のマドレーヌと飲み物を配っていく。
水分をあまり採りたがらない僕にはマドレーヌだけ。他のメンバーの飲み物はそれぞれ彼らの好みに合わせてある。そんな心遣いをしてくれるこの人が優しくないわけがない。

ほっこりする。心が暖かくなる。

詰まるところ、僕はそんな優しい人達で構成されたこの生徒会というものが好きなのだ。
何よりも大切で、守りたい。守るなんて大層なことは出来ないかもしれないけど、せめて。せめて自身のせいで彼らの足を引っ張ることはだけはしたくない。

(王子様イメージを壊さずに頻尿をやり過ごす。これが今の僕に出来る最大の使命だ……っ!今夜対策を練らないと)

いつも通りの放課後、穏やかな生徒会室。
その一角で、僕はひっそりと誓いを建てた。

(頻尿になんか絶対負けない!!)


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