副会長様の場合


(皆になんて言い訳しよう。『トイレ漏れそうだったからダッシュした』は王子様的にアウトだよなあ……)

いくら自身が気にしていない、といっても周りはそうはいかない。イメージというものは時に凄まじい力を持つのだ。
生徒達の中の″王子様東雲亮史″像が崩れてしまった時、恐らく自身の足下は掬われる。
そう考えているからこそ、僕は誰よりも他人の目を気にしていた。

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「あっ、あっきー帰ってきた!もうどこ行ってたのぉ〜?」

生徒会室の扉を開けた瞬間、底抜けに明るい声に出迎えられた。あっきー、っていうのは言わずもがな僕のことで亮史のあきからとったらしい。

「ええまあ、ちょっとね」

たれ目が色っぽいと評判の会計、時坂穂波に曖昧な笑みで答える。会計は一瞬訝しんだような顔をするが、触れられたくない空気を感じ取ったらしく素直に「ふぅん」と口を噤んだ。
明るい茶髪に少し着崩した制服、加えて緩い口調のためチャラ男などと言われているが、実はとても人の心の機微に聡いのだ。

(いい子、なんだよねえ……)

一人感慨に耽っていると、今度は生徒会室の上座から声が掛かった。生徒会の中で最も偉い人物、生徒会長だ。

「大丈夫なのか?」

本人は無表情を保っているつもりだろうが、彼の目はありありと心配の色を覗かせている。
そんな不器用な優しさがくすぐったくてとてつもなく嬉しい。

「大丈夫だよ、心配かけてごめんね」
「別に心配したわけじゃない」
「うん、でもありがとう」

自慢の満面の笑みで返したらふいっ、とそっぽを向かれてしまった。首筋がほんのりと朱くなっているから多分照れているんだろう。

(可愛いなあ……)

心の中でこっそりと思う。
無表情で冷徹。少し横暴な学園の王様。
それが生徒会長、御笠玲二に付けられたイメージだ。


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