副会長様の場合
会長のお疲れ、という言葉に被せるように吐き捨て、勢いよく会議室を飛び出す。遠くで椅子の倒れる音がして、「ふ、副会長、様……?!」なんて声が聞こえた気がしたけど今はそんなことに構っている余裕はない。
なるべく刺激を与えないよう慎重に、且つダッシュで向かう先。
それは――、
さすが業者が入っているだけある真っ白な壁に、ピカピカと輝く鏡。そして連なる個室達……所謂トイレ、と呼ばれる場所だ。
「今回は本当に危なかったあ……漏れるかと思った」
個室に滑り込むと安堵の溜息がもれた。
下品かもしれないが、自身の尿がきちんと便器に収まっていく音を聞くと酷く安心する。
今回は漏らさなかったんだ、と感じることが出来るから……
東雲亮史、17歳。
学園の代表である生徒会にて副会長を勤めている。
相貌には常に笑みをたたえており、性格は極めて紳士的。
まるで王子様のようだ、なんて声もちらほら聞こえてくる。
しかしさすが先人の言葉。『天は二物を与えない』とはよく言ったもので、例に漏れることなく僕にも欠点と呼ばれるものがあった。
学園の王子様の欠点
それはまさしく、頻尿持ち、というものだ。
「ふう、すっきりしたあ……やっぱり我慢はよくないよね。いっそのことオムツでもした方がいいのかな」
だが僕自身は別に頻尿持ちということを苦に思っていない。
少し面倒だとは思うが、人よりちょっとトイレが近くて我慢が利かないだけ
所詮その程度の認識である。
「……いや、さすがに高校生でオムツはマズいかな。でもそろそろハル○ケアだけじゃ心許ないというかなんというか」
うんうんと唸りながらも鏡でしっかり身嗜みを整え、トイレを出る。
学園の王子様というイメージを崩さない為、そういうところには気を配らなければならない。
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