シャーペンとあいつと俺と



「ちょっとちょっとストップ!落ち着けよ久住!死ぬとか冗談やめろって、な?」
「冗談?!冗談なわけないだろう!僕の愛を証明するにはこうするしかないんだほっといてくれ」
「ほっといてくれってお前なあ……」

本音を言ってしまうと、ほっておきたい。ぶっちゃけ、もうこいつの相手はしたくない気持ち悪いし。
だけど俺にも人並みに責任感というものがあるわけで……。このクラスでの掟、『久住の隣の席になったやつは、久住の面倒を見る』をクラスの一員として守らなければならない。
だから――

「……ほっとけるわけないだろ。もっかいちゃんとシンシアと話してみろよ。シンシアもお前の死なんて望んでないと思うぜ」
「本当?シンシア……」

俺の決死の思いが伝わったのか、何時の間にか取り出していたハサミを置いて久住はシンシアに語りかけた。

「僕のこと、嫌い?」

鼻をぐずぐず啜りながらシャーペンを握り締めている男子高校生の図は大変痛々しいが、俺は生暖かい目で見守っていた。気分は出来の悪い子を叱咤して送り出す母親、みたいな感じだ。
一人でうんうんと納得していると、突如俺の左から奇声があがった。

「だよねぇえええええシンシアが僕のこと嫌いなわけないよね!うんうん、僕わかってた!もうシンシア愛してるよ!!アイラヴユー」

シンシアを握りしめ机の上で悶えているところを見る限り、どうやらシンシアとの一件は落ち着いたらしい。
俺も自分の任務を無事全うできたわけだ、よかった。
こうして俺があいつの面倒を見てやることでクラスの平穏が保たれることは非常に嬉しい限りだ、だけど……

「えへへへへシンシアー」

締まりのない笑みを浮かべたこいつを見ていると、

「早く席替えしてえなあ……」

そう思ってしまうのは仕方がないことだと思う。


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