後輩×ガチムチ乙メン


「くま・・・」

ショウウィンドウに飾られているそれはそれはかわいいくまのぬいぐるみだった。俺の呟きにはっとした顔をして、先輩はわたわたと慌てだした。

「いや、これは違くてだな。そう、妹。妹がああいうの好きで。買って帰ったら喜ぶと思って」

言いながら自分でも無理のある言い訳だと思ったのか、だんだんと尻すぼみになっていく声はかすかに震えている。羞恥で赤く染まった目元はまるで果実のようで、舐めたら甘そ
うだなと頭の隅で思う。

「先輩、ああいうの好きなんですか」

まっすぐ先輩の目を見ながら問うと、観念したのかこくり、と首を縦に振る。その様は普段主将として堂々と立ち振る舞う先輩を幼く見せ、俺の心臓をギュッと掴んだ。

「じゃあ、ちょっと待っててください」

そう先輩に言い残すと、俺は可愛らしいくまのぬいぐるみを買うため足早にその場を離れた。
抱えられるほどのくまを抱えて先輩のもとに戻ると呆けた顔でこちらを見ている。

「お前、ほんとに買ってきたのか」
「だって、先輩これほしかったんですよね」

なぜそんな顔で見られるのかわからずそう聞き返すと、先輩は消え入りそうな声で話し始めた。

「だって、気持ち悪いだろ。こんな厳つい野郎が、ぬいぐるみ好き、なんて」

そう言った先輩は泣きそうで、痛々しくて、俺は思わず抱きしめていた。

「気持ち悪くなんてないですよ。ぬいぐるみが好きだろうがなんだろうが、先輩であるこ
とに変わりありませんから。俺はそんな先輩も大好きですよ」
ぎゅっと手に力を込めると腕の中の先輩は目に見えて慌てだした。

「な、好き?好きって、お前」
「はい。俺先輩のことが好きなんです。敬愛とかじゃなくて、性的に。先輩と手つないでキスしたいしそれ以上のことだってしたいです。」

どさくさに紛れて先輩の張りのある尻を揉みこむと、ひゃっ、とずいぶん可愛らしい声をあげて固まっている。顔を真っ赤にして動かない先輩に精一杯背伸びをして耳元で囁く。

「先輩、これから覚悟しといてくださいね。絶対に落として見せますから」

ちゅっとリップ音を残してゆっくりと先輩から離れる。それからくまのぬいぐるみを先輩に渡して、自分の中での最高の笑顔を作る。

「先輩、それじゃあまた明日」

混乱しているだろう先輩を残して、俺は明日からどうやって先輩を落とすかを考えながら走り出した。だから、俺は気づかなかったのだ。そのとき先輩が真っ赤な顔をくまに埋めながら、もう落ちてるっつの、と呟いていたなんて。


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