短編
一人ぼっちの王様

(ディバゲ/エビルアーサー/男主/シリアス)


届かない
僕の声が、届かない


「ランス!ランス……!!」


僕の前で、倒れてしまったランス。
ドクドクと、彼の血が僕を汚した。


「ボス……!なんで、こんな…!!」


僕は、目の前の彼を“ボス”と呼ぶけれど
僕が大好きなボスとは、雰囲気が違う

日の光を浴びて、キラキラと輝く金髪は…今や銀色
白色の服は、黒色に…そして、白百合
あの綺麗な瞳は、紫色になってしまっている


大好きなボスは何処?
貴方は、だぁれ?


「ねぇ、ボス…ボス!……………あ、アー…サー……」


普段、二人きりの時にしか呼び会わない名前で最愛の彼を呼んで見るのだけど、彼は虚無を見つめていた


「アーサー……アーサー……!!」


ボロボロと、僕の瞳から涙が溢れる
だって、彼はもう…僕の声なんて聞こえて無いんでしょう?
僕の後ろで、アカネ君達も必死に声を上げるけれど、彼はただただボーッとするだけで


「………………名前」

「!!アーサー?」


消え入りそうな声で呼ばれた僕の名前
嬉しくなって、彼に駆け寄った
しかし、僕は、結局ランスの二の舞になる


「ガハッ!!」

「………………」


後ろで、ミドリちゃんの悲痛な叫びが聞こえる
ビチャビチャと、床に僕の血が落ち、ズルリとドライバが引き抜かれると共に、一体どんだけ血が流れてたんだと言いたくなるような量の血がゴポッと溢れた

朦朧となる意識の中、ランスには申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう
でも、それよりも、僕の目の前に立つ、王様
僕の返り血まみれの王様が、泣いていた気がして

最後に伸ばした手は
捕まれる事なく
空気を掠めて終わった


一人ぼっちの王様
(最愛の者にも手をかける)
(君こそ、僕の王様に相応しい)

エビルアーサーってスクラッチなんですね、意外
アーサー×名前前提でした



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