短編
無意識に、堕ちる。

※「気侭に、無意識に。」主人公(男主)。
シリアス、R15


名前の国はレベルタと交流が深く、幼い頃から一緒だった。レベルタの王子は名前と同い年、そして何より名前にとってレベルタの王子レイヴンは初恋の相手であった。彼にはオフィーリアという婚約者が居たが、初恋の彼が幸せならそれで良かった。彼とオフィーリアが幸せになってくれるなら、名前は良かったのだ。
だが、それは叶わず、身体の弱かったオフィーリアは高熱でこの世を去ってしまった。レイヴンはオフィーリアの死を自分のせいだと戒め続け、彼は死を望む。オフィーリアの元へ、行きたがっている。
しかし、名前はオフィーリアがそんな事を望んでいないと思う1人であり、名前は知らぬ内に何かがあればレイヴンを誘った。それは食事や、遊びだったりもしたし、普通に仕事関係でもあった。名前は他国との交流が深く、友達も多かったが誰よりもレイヴンを大切にしていた。初恋の人だから。居なくなって欲しくないから。だから、ついいつも無意識にレイヴンの傍に居た。何をするのにも彼を付き合わせた。オフィーリアはレイヴンが同じ世界に来る事を望んでいない。だから。でも。

「ふ、んっ……あ、っ!」
「………っ」

クチュクチュと卑しい水音。幼い雰囲気のある名前の部屋に似つかわしくない。暗い部屋に、確かに部屋の主である名前。そして、そんな彼の幼馴染みであり、初恋の人…レイヴンが居た。2人の影は密着し、2人の間から卑しい水音が響いていた。

「れ、い……。」
「…何ですか?」
「どうして…こんな……?」

とろんと蕩けた瞳だった。どうしてと狼狽える名前にレイヴンは再び唇を重ねる。舌を絡ませ、唾液を混ぜる。飲み込みきれない唾液が端から零れ、ビクビクと身体が痙攣する。

「どうして、など…。私はただ、名前が好きだと気付いた…それだけですよ。」
「だ、だって!今まで、オフィーリア、オフィーリアって……!」
「ええ。今でも勿論オフィーリアは好きです。愛しています。ですから。」

するりとレイヴンの白い腕が、名前の肌を撫でた。ビクリと身体が跳ね、頬が紅く染まる。

「名前は何処か…オフィーリアに似ている。」
「え…?」

今度は違う意味で身体が跳ねた。確かに名前はレイヴンと同じくらいにオフィーリアと面識があり、オフィーリアと話すことも多かった。とはいえ、自分達が似ていると感じた事は今まで無かった。故に、何故。急に?焦る気持ちが名前を支配する。

「嗚呼…その表情……。良いですよ。素敵です。」
「レイヴン…怖いよ……止めて…?」

震える声で呼びかける。しかし、彼は遠くを見つめたまま、名前の肌に触れた。

「貴方が私が死ぬ事を拒むなら…貴方がオフィーリアの代わりとなって下さい…。良いでしょう?名前。」

そう言って細められた瞳に、名前は静かに涙を流した。

無意識に、堕ちる。

あくまでifです。ノーマルVer.月覚醒持ってないから気になります。



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