短編
気侭に、無意識に。

※男主 どっかの国の王子
名前くんに振り回されるレイヴン

「レイヴンー!遊びに行こーっ!!」
「……嫌、です。」


そう言いゲンナリとした表情を見せるレイヴン王子に、名前は駄々を捏ねた。隣国の王子である名前は小さな頃からレイヴンと接点があり、度々レベルタに遊びにやって来る。小さな頃から、と言う事はつまり、レイヴンの婚約者であるオフィーリアの悲劇を知っているのだが、そんなの彼にはお構い無しだった。「レイヴンが悲しむとオフィーリアも悲しむ!」と分かっている名前は、他国との接点をあまり持ちたがらないレイヴンを振り回す。お陰で自虐に走る暇も与えやしない。

「レイヴンー!パレード行こーよー!!パレードーっ!!!」
「私はそんな場所に行く資格等ありません…。名前が1人で行ってきたら良いですよ…。」

ハッ、と遠い目で吐き捨てるレイヴンに頬を膨らませた名前。レイヴンの従者達はもう見飽きた光景だった。
レイヴンにとって名前は所謂幼馴染みに値する。これまで共に遊ぶ事もあれば、喧嘩もした。オフィーリアが亡くなってからは気まずい雰囲気が増えたかと思いきや、矢張り彼の「オフィーリアは〜」思想により無理矢理彼を巻き込むことが増えた。ロトリアの収穫祭時期に来た宛名のない招待状が来た時も、最初はレイヴンは手をつけて居なかったが名前の「死んだ者に会えるかも」発言によりパーティ参加を決めたのだ。
上手く手懐けられている、と言えばいいのか。しかし名前はほぼ無意識にレイヴンを巻き込んでいる。彼の掲げる思想「オフィーリアはレイヴンの悲しむ姿を見たくない」「レイヴンが悲しむとオフィーリアも悲しむ」はそんな無意識の中に建てられたものだったりする。

「僕、レイヴンとじゃないと行かないもん!花の精の国の出し物あるんだよっ!?アキトとかリオンとか居るんだよ!?行こーよー!レイヴンが行くって言うまで僕ここから動かないっ!!」

ガタガタとレイヴンの座る椅子の背もたれを譲り続ける名前に、従者達はハラハラしながら見守るしかなかった。従者達からしたら、是非ともパレードに行って欲しい。夕凪の国·レベルタの王子は彼なのだから。パビリオンを出店していなくても、パレードに参列しなくても。夢に溢れるこの世界、記念すべき大イベント。参加しないのは大分惜しいものである。

「レーイーヴーン!!!」
「……はぁ。分かりました、わーかりました。行けば良いのでしょう…?ですが、名前が満喫したら帰りますからね…。」
「わーーいっ!レイヴン大好きー!!」

むぎゅー!そう言いレイヴンに抱きつく名前に従者達はクスリと笑った。レイヴンと同い年である筈なのに、言動のせいでとても幼い彼。自由気ままで、無意識で、それでも自分の思想の為に幼馴染みを引っ掻き回す。

「どうぞ、楽しんでらっしゃいませ。」

従者達は2人の王子を送り出す。ワールドサロンは、パレードは彼等に夢や希望を与えるのだろうか。彼等の、いや、名前の楽しそうな声がレベルタに響いていた。

気侭に、無意識に。

レイヴン王子好きです。ファントムシップ月覚醒の花嫁姿は狡い。



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