ハッと目を覚ますと、アンナが心配そうにボクの顔を覗き込んでいた。


「スミレ、魘されてた」

「ア、ハハ……ちょっと昔の夢、見て」

「昔?」

「うん、昔」


何だか身体がやけにだるい。風邪を引いてしまったのかも知れないなぁ、そうボンヤリ考えていると。


「キング程体が強くないのに、ソファーで何も被らず寝てるからかなぁ?」

「……多々良」


多々良がトレイにヨーグルトと桃缶を乗せてコチラに来てくれた。食べれる?と聞かれたものだから、こくりと頷く。
ソファーから起き上がると、体が痛かった。これは完璧に風邪を引いたんだなぁ…と苦笑い。
キョロキョロと店内を見渡すものの、"彼"の姿が見当たらない。


「草薙さんなら、風邪薬を買いに行ったよ」

「え…」

「此処で寝る前から、何だか今日は菫が風邪っぽい、って気付いたの草薙さんだよ。それに、ずり落ちちゃってるけど……それを掛けてくれたのも」

「あ」


ソファーからずり落ちてしまっているブランケット。ボクはそれを拾い上げてぎゅっと胸に抱く。
多々良はクスッと笑って、「俺は言われるまで気づかなかったんだ、ごめんね」と零す。ううん、そんな事は無い。ボク自身だって気付かなかったんだ。それを、出雲は気付いたんだ……。
多々良はヨーグルトをスプーンで掬ったが、隣にいたアンナがねえ、と一言。


「私がやる」

「え、アンナが食べさせてあげるの?」

「うん」

「え、いや、ボク1人で食べれるよ…」


客も店主も居ないバーは静かだが何処か華やかだった。ボクに多々良かアンナか、どっちが食べさせるかで揉めている声が響く。そう言えば尊はどうしたんだろう。美咲達はゲーセンかなぁ?
薬を買って帰って来てくれるであろう店主に、どうお礼を言おうかな。ボクはそう思いながら、目の前の2人を見守った。

深くまで浸透し


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