ボクはヤクザの組長であった父に、蝶よ花よと愛でて育てれられた。部下の人達も私の事を気に入っていて(と、言うか気に入って無ければ命が危うかったとかだったのかも知れない)、誰も父に刃向かう者、私に酷い事をする者は居なかった。

そんな中だった。ボクが19になったその日。組員の1人から受け取った花束が見る見る内に枯れ花と化した。
また、別の組員から貰ったシルバーアクセサリーは一瞬にして錆びた。その瞬間から、組員達のボクの見る目が変わった。
そして…ボクをとても可愛がってくれた父でさえ、そんなボクを見て"化け物"と零した。

調べた事によると、ボクは"触れた物を腐食させる"力を持つ、ストレインと言う存在であるという事が分かった。この力は植物以外の生きている物には使えない。だが、植物を腐らせ、金属を酸化し、土瀝青(アスファルト)を溶かす。とても危険な能力だった。

こんな能力を持つボクだが、幸いなのか「出ていけ」とは言われなかった。ただ、「関わるな」と言われた。化け物を見る目で。
上手く使えば他の組を潰す事も出来そうな能力だが、そこは父の父性なのか何なのか。ボクをそんな場所に連れて行きたくはなかったようだった。
父はそうでも、他の組員は態度も視線も何もかもが変わった。化け物、近寄るな、気持ち悪い……父が居ない場所で浴びる視線と暴言に、ボクは怖くなって夜中に家を出た。

しかし、行く宛なんて無いボクは鎮目町をフラフラと彷徨ってそしてある場所に行き着いた。それが、BAR HOMRAである。
気を失っていたボクを拾ってくれた出雲に、ここで行き倒れるまでの経緯と、自分がストレインである事を説明すると、ビー玉越しにボクを視ていたアンナが静かに口を開いて
「大丈夫。この人、悪い人じゃない。……スミレ、大丈夫?」
こう、声をかけてくれた。未だに思うけれど、この時のアンナは女神様だったと思う。

その後の話なのだが、トントン拍子で進んでしまった。尊の手を握らされ、熱い炎に焼かれると思ったけれどその炎はボクを受け入れた。右下腹部付近に現れた印。それによってボクは、吠舞羅の一員になったのだ。

僕の凍った心の


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