「菫、買い物手伝ってくれるか?」
「……いいよ」
久し振りに外に出た気がした。ボクは専らバーか、その2階に篭っている事が多い。美咲には不健康だ、とか、遊びに行かねーかとか言われるけれど、無理だし仕方ない。
「(だって、他人の視線が怖い)」
それは決して、19と言う歳の癖して着ているゴスロリワンピのせいではない。むしろこれは、普通の格好だと異様に写ってしまう手袋を誤魔化してくれるのだ。ボクは、他人の視線が怖い。そう、あの時から、ずーっと……。
「……菫、大丈夫か?」
「え……?」
「顔色、めっちゃ悪いで」
「あ……ううん、大丈夫」
心配そうにボクの顔を覗き込む出雲に悪いと思って力無く笑った。しかし、それが余計に心配を煽ってしまう。
「…無理に連れ出して悪かったなぁ…もう、帰るか?」
「だ、大丈夫だよ!それに、」
ボク1人じゃ、ないから。
小さく呟いた言葉は出雲に伝わって居たようで。ポカンと口を開いていたが、すぐにクスリと笑ってくれた。
ぽん、と頭に手を乗せられたと思ったら、次の瞬間髪をグシャグシャにされてしまう。や、やめてよ!そう言っても出雲は止めてくれない。
「ふふ、ほな行こか」
「…?」
「そこは直ぐに手、乗せてくれるもんやで?」
「ご、ごめん」
"お手をどうぞ"って事だったのか。
ボクは慌てて差し出された出雲の掌に自分の掌を重ねた。
それはすぐにギュッと握られる。その手がとてもあたたかくて、ボクは自然と笑っていた。
繋いだ手のあたたかさは
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