「スミレ、起きて。朝だよ」

「う………ん、あと、5分……」

「…イズモ、怒ってるよ」

「う……ん?うん??」


むくり、ベッドから起き上がると、アンナがころんとベッドに転がった。くしくしと目を擦り、呆けて壁を見つめる。
そう言えばさっき、出雲が起こしに来てくれたような気がする。その時もボクは「後5分」と言ったような、言わなかったような………。
枕元に置いてある白い手袋をして、ベッドに転がったまま起き上がっていないアンナの手を握った。お揃いの動物パジャマは多々良が買ってくれたものである。

アンナを連れて下に降りると、カウンターに立っていた出雲が溜め息を吐いてこちらを見た。因みにソファーには尊が寝ている。多々良は……居ないようだ。


「ウチのお姫さんはお寝坊さんやなぁ。ほら、朝食作ったるさかい、着替えてき」

「分かった」

「スミレ、行こう」

「うん」


こくりこくりと頷くボクの手を引くアンナ。着替えてから降りれば良かったなぁ…そうすれば、二度手間にならなくて済んだのに。そう思ったが、下から香る甘い匂いにまぁ、良いかと思ってしまった。
アンナとお揃いのゴシックロリータのワンピースは、最初こそ恥ずかしさがあったもののもう慣れた。慣れって怖い。


「お、二人共着替えたな。今日は菫のリクエストでフレンチトーストやで。アンナはほれ、イチゴジャム」

「ありがとう、イズモ」


コトリと自分とアンナの前に置かれたフレンチトーストとホットミルク。その甘い香りにホッと心が和む。
店に流れる静かなBGM。尊の寝息に、フレンチトーストに苦戦するボク達のカチャカチャと鳴らすナイフとフォークの音。ボクはそっと微笑んだ。

それはに見た物語


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