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悪夢よどうか醒めないで


今の僕と君の関係は、歪なのだろう。
昔の関係は、何処へ行ったのだろう。
近付き過ぎた僕等は、何処かで歪んだ。
でも、それは何て優しい悪夢なのか。


「"あの子"が、帰ってくる、って」
「我輩とっくの昔に聞いたぞい」
「何で僕に教えてくれなかったの」
「何で、なんて。巫都、我輩に聞かなかったじゃろ」

誰が予想できるか、と三条巫都は舌打ちした。有り得ない。"あの子"が帰ってくるなんて。普通科に行ったのに。何故。三条巫都の脳内に渦巻く想いはその様なものだった。
そう、帰ってくるのだ。誰が?"彼"が。
もう1人の蝶。papillon時代の三条巫都の相棒が。

「情報によれば、彼の親が許さなかったようじゃ。まぁ、彼の親は海外にもその名を轟かす大女優の母と、国内トップアイドルの父じゃからの。仕方ないと言えば仕方ないの」
「へぇ……」
「後、"皇帝"のお望みの様じゃな」
「はぁ!!??」

朔間零の言葉に三条巫都は訳が分からなくなった。papillonを解散させたのは誰でもない、"皇帝"である天祥院英智だ。その彼が何故再び"あの子"を望んだのか。また、彼のプライドをズタズタにしたいのか。三条はクラリと目眩を覚えた。
正直、無理矢理とは言え"あの子"が帰ってくるのは嬉しい。きっともう自分とはユニットを組んでくれないであろう事は三条が一番分かっている。それでも、彼は大女優の母とトップアイドルの父を持つだけあって才能はピカイチであった。あの才能を開花させずに腐られるのはプロデューサーではないにしろ、三条巫都と言えど惜しい事ぐらい分かる。しかしその分、彼はそんな親を持つだけあってプライドだけは人1倍あった。親と比べてるな、と言うプライド。俺を見ろ、と言うプライド。三条は頭を抱えた。

「あああああ…………」
「何じゃ何じゃ」
「不安でしか無いよ……」
「一荒れ来そうじゃなぁ」
「TrickStarの出現、レオちんの復帰、それだけでもハリケーン並だってのに…!もぉぉぉっ……!!」
「モーは牛じゃよ巫都」

三条巫都は久々に目の前の自称吸血鬼に怒りを覚えた。何でこう余裕綽々で居られるのか分からなかったのだ。いつの間にか三条は朔間零を棺桶に押し倒していた。

「おや、熱烈じゃの……♪」
「バッカじゃないの。僕はね、"あの子"が帰ってきてくれるのは嬉しいさ。でもね、僕は静かで居たいの。僕を、巻き込んで欲しくないの。TrickStarが何しようがどうでもいいよ。でも、」

僕を、巻き込まないで。
朔間零の胸に三条巫都は頭を預けた。朔間零も、三条巫都も分かっていた。"皇帝"の狙いが。
再びpapillonを結成させ、強力なユニットが復活した事により湧き立つTrickStarの協力者達を、再びpapillonをぶっ潰す事によって絶望に沈める。そして、今度こそ、三条巫都を自分のユニットに加入させる。どうせこんな理由であろう事ぐらい、分かっていた。

「零、零、れい………」
「うん、うん、何じゃ巫都」
「僕は、ずっと零と居るよ。どんなに、えーちが僕を仲間にしたくて周りを壊したとしても」
「分かっておるよ」
「零」
「巫都」

また、世話になるかもね。
そう言って三条巫都は朔間零の唇に口付けた。


悪夢よどうか醒めないで

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