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壊れてからも優しいまま


君はいつの間にか僕の側にいて。
僕が笑うと君も笑って、
僕が怒ると君も怒って、
僕が泣くと、君も一緒に泣いてくれた。
僕が壊れた時も、君は一緒に壊れてしまった。



「なんと言うか…僕ってだらしないと言うか」
「………」

三条巫都の吐き捨てた言葉に、朔間零は溜息を吐いた。解っているのなら、何故どうにかしようとしないのか、と。
2人は三条家に来ていた。三条巫都は滅多な事が無いと家に帰らない。大体は軽音部部室にある、朔間零の寝床である棺桶で寝ている(勿論、朔間零本人もそこで寝ている)。因みに、朔間家にお邪魔になっている事もあるのだが。三条は食が細い為、昼食しか口にしない。食が細いのは朔間零やその弟、朔間凛月もだが…2人はそんな三条を大変心配していた。三条巫都は世には"少年アイドル"として出回っているもの、その実は思春期の女の子である。食が細いのは仕方がないのかも知れぬが………朔間零はそう思いながらも、まずは現状を受け入れなければと思い出す。

三条家、巫都の部屋。そこは書籍や雑誌、ぬいぐるみ、アクセサリーに洋服などが散乱していた。

「巫都や。此処は泥棒にでも入られたのかえ??」
「うーん、僕が小さい時に1度だけ」
「それはそれで気になるが…最近入られてないかと我輩は聞いておるのじゃが」
「無いよ、多分」

それを聞いて朔間零は再び溜息を吐いた。三条は元々家に帰ることが無かったとはいえ、部屋を倉庫化させていたとは。朔間零は近くに落ちていた布切れを引ったくる。それは愛らしいフリルのスカートだった。

「うわぁ、懐かしい。そんなのも着てたねぇ…」
「まさかとは思うが、下着までこの中に埋もれていると言うラッキースケベは「無いから安心して」ふええ…………」

巫都が手厳しいぞい、と嘘泣きをする朔間零を横目に、三条巫都はあるものを探し出す。そんなに深くやっていない筈だ。いくら、過去の栄光と言えど………。
三条がむんずと掴んだ袋に入った布切れ。それを引っ張り出すと、黒の燕尾服のような衣装だった。三条があった、と零すと隣にいた朔間零もその衣装を覗き込む。

「ああ、懐かしいものじゃの。"papillon"の衣装」
「うん。"あの子"とリボンとかタイとか、色違いなんだよね。懐かしいなぁ」

この汚部屋にあったにしては、袋に入っていただけあってその衣装は全く汚れていなかった。ホツレも無く、虫に食われたような形跡も無い。三条巫都はソッと衣装抱きしめた。
"papillon"は終わった。しかし、その思い出は、伝説は、決して終わっていない事をその衣装は物語っていた。


壊れてからも優しいままで

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