誰より君が、
「…………巫都」
「……なぁに?零」
風が凪いだ。バサバサとプリントが空を舞う。
「何でだ」
「……なに、が?」
俺は自分の足元にあったプリントを掴んだ。それはこの前俺が面倒だと言った【進路調査表】。そこにあった女の子らしい丸っこい文字は"君咲"の文字は無く、"夢ノ先"の文字。
「何でだよ」
「何で、って言われてもなぁ」
仕方なかったんだよ。
そう言って巫都は笑った。それはそれは寂しげに。
「"私"はね、零」
「…………」
「君の事が、好きだったよ」
「…………」
「"僕"の事は、愛さなくて良いから」
「…………」
「君の側に、居させてくれないかな…??」
そんな、泣きそうな顔をするくらいなら
何故、お前は。
誰より君が、好きだった
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