撲殺
「…何だよ、そのデカい瘤は」
「今日はね、撲殺にチャレンジしてみた結果なのです」
「ああ……」
撲殺。殴られ、殺される…というのは安っぽいサスペンスドラマじゃ定番と化している展開。そう言えばコイツ、あの多剤大量処方の時に"ドラマじゃ定番"と言っていた気がする。案外、サスペンス好きなのかもしれない。
「今でこそ瘤で済んでるけど、最初は血塗れで大変だったんだよ?一応、日曜大工とかで使う、鉄のトンカチ使ったから」
「…鉄のトンカチ使って瘤と血で済むって
、お前石頭なのか」
「意識は朦朧としたよ?でも、うん、そうなんじゃないかな??」
いや、違うなと俺は思った。ワザと急所を避けたか、対して力を入れなかったのか。
もう、稲荷の"死への憧れ"が分からなくなってきた。死にたいのならば、さっさと死ねばいいのに、そうしない。ただ、自分を傷つけ、そして痛みを引き摺って生きる。稲荷椿が何をやりたいのか、本当に俺は分からない。
撲殺
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