多剤大量処方


「お前、自殺願望あるのか」

「うーん、どうなのかなぁ。ただね、"死"に憧れてるの」

「ふーん…」


興味、なさそうだねぇ。そう言いながら稲荷は茶色の小瓶から白い錠剤を掌にザラザラと出し、そして一気に口に含んだ。
今日は服毒死か?と尋ねると、水でそれを流し込んだ稲荷は笑って「大量処方」と笑った。つまり、それは睡眠薬。睡眠薬は大量に飲むと死に至る………と言うやつだ。デタラメかも知れないのに、何でも試すのか。


「デタラメじゃないよ。確かに今現在処方されている睡眠薬は安全性が高いからどれだけ飲んでも致死量に至る事は無いらしいけど。でも、意識吹っ飛ばす力はまだあるんだもの。体質的に、いけるんじゃないかな。」

「ふーん」

「まぁ、自分が意識吹っ飛ばせるのかなんて、分かんないけど。ドラマじゃ定番じゃない?いけるかなーって」

「……………」


だが、 死ぬことはできない。コイツが言った通り、昔はバルビツール酸系、とやらの睡眠薬が主流だったそうだ。これを大量に飲むと実際自殺できたそうだが。しかし今現在はベンゾジアゼピン類という薬が主流になっている。これはどんなに大量に飲んでも死ぬことはできない。つまり、稲荷ただ極限の眠さを味わっただけだったのだ。

多剤大量処方




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