君に触れられない

I can't touch you.

巫都と出会って何週間か経ったある日。俺はある事に気がついた。

「お前、夏服?」
「?あ、確かに言われればそうだね!」

言われなければ気づかなかったのか。自分の姿を見て、あっけらかんと笑う巫都を見るとやはりこいつが死んだ者だと認識が追いつかない。足も生えてるし、めちゃくちゃ明るいし、笑顔を振りまいてるのに。だが、確かにこいつは幽霊なのだ。触れる事は出来ない。気が付けばふよふよと風船の如く浮いている。それが現実につき戻してくれた。

「今は秋だよね?」
「ああ。お前は夏に死んだのな。」
「そうみたいだねー!」
「客観的だな。」
「うん…。実感湧かないからかなぁ…?」

夕暮れの公園には誰もいない。さっきがたまでガキが何人か遊んでいたが、迎えに来た親と共に帰っていった。ガキがいる間は俺と巫都は話さない。巫都は俺以外見る事が出来ないため、俺1人話してる危ないヤツ認識をされてしまうからだ。巫都がほれだけは控えよう、と言った。何でだよ、話を聞きたいんだろと言えば「摂津くん、折角カッコイイのにそんな噂立っちゃったら私が嫌だ。私のせいで摂津くんに悪いイメージ付いちゃうの、嫌。」って。こいつ知らねぇのか。俺、一応不良なんだけど。そう言いたかったが、野暮だと思った。今の俺はMANKAIカンパニーで演劇をやっている。素人でも、役者なんだ。変な噂は立たないに限る。既に立っているものはどうしようもないけれど。

「(でも、何か癪なんだよな。)」

別に俺は、巫都のせいで悪い噂が立つことに嫌な思いは無かった。むしろ…。俺はそう思って何考えてんだと頭を振った。


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テーマ「人外ファンタジー」
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