君に触れられない

I can't touch you.

そいつに出会ったのはいつだったか。ふわふわと、1人その場で浮いていた。俺は元より幽霊の類が見えた訳では無いのに、何故かそいつは認知出来た。呆然としている俺と目が合ったそいつは、とても間抜けな面を晒していたのが記憶に新しい。慌てふためいて、地面に激突していた。幽霊って地面に激突出来るのかと変な所で笑ってしまったものだ。かあっと真っ赤に染めた頬。あ、地味に可愛いなんて柄にもなく思ってしまった。幽霊なのに足があるそいつは、俺の元にてくてく歩いて近付いて。目の前に立ったそいつは俺より頭一個分ぐらい小さかった。幼さの残る顔だが、薄く化粧が施されている。よくよく見ると服は制服で、O高のものだった。

「初めまして。ごめんなさい、私が見えた人初めてで、つい驚いちゃって。」
「いや、俺も悪かった。その…ついジッと見て。」

驚くほど透き通った声だった。にこりと微笑んだそいつはやはり可愛らしい。何で俺、幽霊相手にそんな事思っているのかが不思議でならなかった。

「私は巫都。貴方は?」
「摂津、万里。」
「摂津万里?あれ、どっかで聞いた覚えが。」

何処だっけ?と悩んだポーズを取ると、ふわりとそいつ…巫都の身体が浮き上がる。考え事をすると浮くのか。おもしれぇ。

「あ!思い出した!花学の摂津くんだ!噂には聞いていたけど本当にイケメンさんだった!」

きゃっきゃっと飛び交う巫都は、水槽を悠々と泳ぐ魚のようである。俺は感情表現激しい幽霊なんかいるのかと、非現実的な事をぼんやりと考えていた。この時の俺は、思ってもみなかったのだ。この出会いが、俺の運命を変えるだなんて。


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テーマ「人外ファンタジー」
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