BL Novel | ナノ

非日常はすぐ側に

※現パロ
※嘔吐表現注意

安倍晴明、年齢は20代、職業は占い師。
その整った顔立ちと美声から数多くの女性…のみならず、男性をも虜にした。占いは恐ろしいぐらい当たると評判。テレビに出てから仕事が増えたらしいが、本人の店は不定期に開く為予約等は行っていない。しかも開店時間は1時間から長くて3時間。彼目当ての客が増えた事が原因らしい。巷では、店を畳み、ネットでのみ活動するのではないか、とも。
そんな彼はテレビ等のギャラにより生活費に困る事はないようだ。店を開けないだろう日はずっと部屋に閉じ込もっている。基本は寝ているか、テレビを見たりネットをしたりと半ニート状態のようだ。折角カッコイイのに勿体ない。最近は食も細いようだ。前はコンビニのレンチンして食べる丼物や麺類等を食べていたが、ここずっと菓子パンや惣菜パンのみ。それで肥えないのだから不思議だ。お風呂は好きみたいだね。ぬるめのお湯に1時間ぐらい浸かっているらしい。ココ最近寒いのが理由なのか、入浴剤は冷え予防の蜂蜜入とか生姜入だとかの結構いいやつ。今度温泉にでも行けばいのに。ねぇ?


「………気持ち、悪い。」

赤文字でつらつらと書かれたその言葉に顔を顰めた。数週間前からずっと、このような謎の手紙と共に手作りのおにぎりやお弁当がノブに引っ掛けられている。最初は手紙は簡素なもので、「ちゃんと食べなきゃ体壊すよ」とだけだった。それにおにぎりだから数少ない友人が心配して持ってきてくれたのかと有難く頂いていた。手作りらしい昆布の佃煮が入ったおにぎり。だが、食べてから誰か分からないからとその数少ない友人にメールで尋ねたのだが、満場一致でこう言われた。

「違うけど?」と。

一気に吐き気がして、食べたものは全部トイレで吐いた。気持ち悪かった。何故、こんな事を、誰が?と。最初は誰かの勘違いで、誰かが部屋を間違えてひっかけたのだろうと無理やり自分を落ち着けさせたが問題は次の日だった。

「おにぎり、おいしかった?」

これは誰かの勘違いでも、部屋の間違えでもない。手紙と共に袋に入っていた手作りのお弁当は全部生ゴミとして可燃物の袋に突っ込んだ。それ以降、その次の日も、その次の日もずっと、手紙と何かしらの手作りの料理が入っていた。全部、可燃物の袋行きだが。
日に日に手紙の内容はエスカレート。最初はこちらを心配するような言葉が軒を連ねていたが、先程の様な明らかストーカーしていますと言うような内容に変わってきている。最近部屋に閉じ込もっているのは貴方のせいだとイライラした。たまに出歩いてコンビニやドラッグストアに買い物に行ったのも尾行されて居たのか。死ぬ程気持ち悪い。

業者に頼んで盗聴器が無いか調べてもらったが、業者も真っ青になるレベルに盗聴器が仕掛けられていた。リビングはもちろん、玄関、キッチン、寝室。果ては風呂場やトイレまで。私が何故こんな目に合わねばならないのか。業者の人間がいるというのに怒り狂って泣き叫んだ。病院に通うことも進められた。だが、自分の中で「まだ大丈夫だ」と言う謎のハードルがあったので、まだ病院に通ってはいない。それに。

「晴明、来たぞ大丈夫か?」
「!晋作っ!」

インターホンから聞こえた声に私は急いで玄関の扉を開けた。銀髪と金色の勝気な瞳。私の幼馴染、高杉晋作だった。
彼は私がストーカー被害にあっているのをいち早く感づいてくれたのだ。事の発端は、あのおにぎり騒動。ほかの皆は「あ、そう」で終わったのに対し、さすが腐れ縁の幼馴染と言うべきか「何かあったろ?」と相談に乗ってくれた。晋作の存在がなかったら、きっと私は今頃……そう思って頭を振った。

「あの、また……。」
「またかよ。懲りねぇな……。」
「もう嫌です…怖い……。」
「……晴明…。」

年甲斐もなく晋作に抱きついて、今までの恐怖から涙がポロポロ溢れて。晋作は何も言わず、優しく背を撫でてくれた。

「…なぁ、あれ、考えたか?」
「……晋作の部屋に引っ越す、こと?」
「嗚呼。」

とても嬉しい誘いではある。寧ろ早く決行してしまいたいぐらいには。だが、今度は晋作も被害にあってしまうのでは…と思い、中々うなづく事が出来ない。

「…もう少し、待っててください。」
「……おう。無茶はすんなよ。」

瞼に優しく口付けられて、思わず頬が赤く染まる。そう、私達は世間一般でいう恋人同士だった。いや、最初はただの腐れ縁の幼馴染。だが、こうして弱った私に優しく接してくれる晋作に私はどんどん惹かれていったのだ。嫌われると思い告白したら、「俺もだ」と抱きしめてくれた。本当に、晋作が居るのは心強い。

「晴明……。」
「ん、んぅ……。」

ちゅ、と優しく唇にキスを落とす。真剣な表情の晋作に、胸がドキドキする。

「俺は、お前を守りたい。」
「……はぃ。」
「俺には、甘えてくれ、頼ってくれ。頼む。」

甘えるのも頼れるのも、私には晋作しかいない。そのまま、私はそっと晋作に身体を委ねた。


「…じゃ、帰るから…。」
「はい。ありがとうございます。」
「また明日も来るからよ。何かあったらすぐ電話しろよ!?」
「ふふ…はい、勿論です。」

夕暮れ時、晋作はバイトの為に帰っていった。一気に静かになった部屋に、悲しさと恐怖が宿る。
玄関にある姿見にそっと目をやる。ブカブカで裾の長いパーカー1枚だけの姿は女の子なら可愛らしいのだろう。萌え袖となってる手をそっと合わせて匂いを嗅ぐ。
晋作は毎日バイトまでの間来てくれて、時にはセックスをして、帰っていく。不安にさせない為にと自分が着ていた上着を1枚置いて。それがとても心地よくて助かっている。晋作と一緒にいる時間、愛し合っている時間が何よりも幸せな一時だった。先程もたくさん、ナカに注いでくれた。処理は済ませている為何処か寂しいがまた明日になれば…そう思うと下腹部がきゅんと締まる。

「(私はなんて淫乱になってしまったのか…)」

溜息を1つ吐こうとしたその時。郵便受けがカコン、と音を立てる。

「………封筒?」

百均でも売っている茶色い細長い封筒。綺麗に糊付けされている上にセロハンテープまで付けられている。だが、宛名もなく、もちろん切手等貼っていない。何だろう……?
ぺたぺたとリビングに戻り、ハサミで封筒を切る。中を見ると1枚の手紙と、そして。


「ひっ!!」

それは。使用済みの、ゴムで。中には確かに白濁が入ってて……!!

「うっ、うぇ……。」

吐き気が込み上げてきて、落ちた封筒から手紙が覗いていた。それは確かに紅く、

「愛してるアイシテルあいしてるアイシテル愛してるあいしてるアイシテルアイシテル愛してるアイシテル愛してるアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテル」

「うげ、ぁ、がはっ、げ、あ……っ!」

べちゃべちゃと吐瀉物がフローリングに零れ落ちる。床に膝をつけた私はただただ無けなしの吐瀉物と胃液を吐き続けた。

「……し、ん、さく………。」

ツン、と胃液の臭いが鼻につく。朦朧とする意識の中で、ソファーの上に置いてあるスマホに手を取った。

「しんさく……しん、さく、たすけて……たすけて………。」

呪文のように。電話の呼出音が流れているそのあいだずっと、彼の名を譫言のように呟いて。きっと彼は今頃バイトで出られないと分かっていて、私は。しかし、予想に反して呼出音はスグに止まった。

『もしもし……晴明?』

ああ、晋作の声。愛しい彼の声。助けて。助けて。

「しんさく、たすけて………。」

意識が途切れる前、聞こえたのは密かな笑い声だった。


END
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