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胸糞悪い話

※DV注意※

Twitterで発言した『好き過ぎて暴力を振るうDV晋作と、好きだから何をされても許してしまう晴明の胸糞悪い話を読みたい』により。
メインストーリー終了後模造
(書いた当時は終章公開されていなかった時)


ずり、と使い物にならなくなった右足を引きずりながら歩く。道行く人々が、可哀想なものを見る目で私を見ていた。

此処は、幕の国。全てが終わったのだ。私の願望も、何もかも。それは、もうどうでもいいのだけれど。

雅の国に、帰りたい。帰れない。

私を雁字搦めにして、この幕の国に縛り付けるもの。

もう、疲れてしまった。
跛をひく私を、すれ違う人々はどう思うのか。いや、まだそれだけなら、いいのだろう。

「痛てぇな!」
「す、すみません…片目が、見えないもので…。」

ふらりともたついた私は男性の1人にぶつかった。男性はじろりと私を睨むが、その表情は直ぐに変わった。私を憐れむものに。

「おい…兄ちゃん…それ…。」
「…大丈夫、です。」

そう、言うしかなかった。
裂かれた羽織、跛を引く右足、包帯で覆われた左目、絞められた形跡のある首。

「だい、じょうぶ、です…。」

私には、こうとしか言えない。

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「ただいま、戻りました。」
「………。」

小さくそう告げると、パチパチと燃える火をじっと睨みつける家主の姿が目に入る。ぼんやりした瞳には覇気はない。覇気がない瞳に、燃え続ける炎が不釣り合いだった。

「…晴明。」
「っ!」

地を這う様な、低い声。晋作はふらりと立ち上がると、ゆっくりゆっくり私の元へ近付いてくる。

「遅かったな。」
「す、少し…お話をしていて…。」

そう言った途端、晋作がピタリと足を止めた。しまったと思った時には遅く。

「んあ"っ!?」

頭に重たい衝撃。ドサリと床に倒れ込むと、晋作は私に馬乗りになった。覇気の無い瞳で、じっと私を見つめる。

「誰とも話すなって、言ったよな?」
「あ……。」
「買い物ぐらい、って許してやった俺が馬鹿だった。」
「ぎぁっ!」

ぐぐぐ、と首に添えられた手に晋作は全体重をかける。空気を吸えなくなった私は必死に首を絞める晋作の手を離そうとするものの、全くと言っていい程歯が立たない。

「あ、あ"あ"ぁ……ひゅ、あ、ぁぁ……。」
「お前は俺のだって何度言えば分かるんだよ!他の奴に声をかけるな、笑顔を向けるな、俺の為だけに生きていろ!!」

もう、駄目、死ぬ…そう思った時にそっと晋作の腕は離れた。私は咳き込みながらも懸命に酸素を吸おうと涙を流す。晋作は冷酷にその様子を睨みつけていた…。

「んぎっ!?ぐあ、痛いっ!晋作、いたぃっ!!」

どかっ、と頭に一撃。体を殴られ、蹴られ、私はただ体を守る為に丸くなり縮こまる事しか出来ず、抵抗らしい抵抗をする事が出来ない。零れる涙は止まらない。

「晴明、晴明、俺の、俺だけの……っ!」
「あ"あ"あ"っ!いだ、い、ごめ、なさ…、も、ゆる、して……っ、ぐっ……ガハッ!」

腹を強く蹴られたと同時に、鮮血が口から溢れる。ごぼごぼと口から血を吐き出す私を暴力を振るうのを止め見つめていた晋作。すると、見る見るうちに覇気がなかった瞳に光が指す。晋作はボロボロで丸くなる私を抱きしめていた。

「わ、るい……俺、また…晴明……っ!」
「しん…さ……く…。」

殴られ抉られ、片目しか見えなくなった瞳が、確かに涙する晋作を映した。私の背中を優しく擦り、時々安心させるかのようにぽんぽんと軽く叩く。

「ご、めん…謝って、許されねぇことしてんのに……。」
「……しん、さく…。」

さすられた右足。腱を切られ、歩く事がままならなくなった右足を。

「せい、めい……せいめい……!」
「………晋作……。」

子どものように泣きじゃくる晋作。
私はそっとその頭を撫でた。

「……大丈夫、です。大丈夫ですから。」

そう、私は、大丈夫。
私には、こうとしか言えない。
愛する者を守る為、こうとしか言えないのだ。

end
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