天然小悪魔、恐るべし


ピアーズがナナに好意を抱いているというのはBSAAの隊員たちなら誰もが知っていた
しかしこれだけ周りに知れ渡っているというのに、一人ぐらい誰かナナに言いそうなのだが本人はピアーズに好意を抱かれているということに全く気づいていなかった

「ナナ!」
「ピアーズさん」
「重そうだな、良かったら持ってやろうか?」

大量のファイルを抱えて歩いているナナにピアーズが声をかける
彼の行為に彼女は目を細めて手に持っていたファイルを彼に預ける

「これどこに持って行くんだ?」
「資料室です、じゃあ私他にも用事があるのでお願いしますね」
「え…?あ、ちょっ…!!」

ナナはそれだけ言うとその場を去っていく、彼女を引きとめようとしたのだがファイルが床へと散らばってしまいピアーズは深くため息をついた
それと同時に影から見守っていたほかの部下たちが現れた

「惜しかったですねピアーズさん」
「そのまま二人で資料室に行けばキスぐらいできたかもしれないのに…」
「なぁ…この作戦上手くいくのか?」

部下たちと一緒にファイルを拾い集めながらピアーズは口を開く
その言葉に部下たちはもちろんですよ!と力強く答えた

「女はちょっと優しくされると好意を持つ!っていうのを雑誌で読んだんですから間違いないですよ」
「雑誌!?そんなのアテにしてるのか!!?」
「絶対大丈夫ですよ、ほらこのウィルって人だって優しくしてから彼女と上手くいったって書いてますし」
「……そういうのはヤラせが多いって聞いたことあるぞ」

仲良さそうに写っているカップルを見てピアーズはため息をついた
彼の性格上こういううさんくさいものは信じられなかった
1週間前から部下の提案で続けている「優男作戦」だが未だに効果が得られない
ナナが自分を意識している様子もなかったのだ

「ほらピアーズさん、これを資料室に持って行ったらお昼に誘いましょう」
「……そうだな」


* * *

昼食時
多くのBSAA隊員たちが設置されたカフェテリアで食事をしていた
そこで一人で食べていたナナの元へピアーズがやって来る

「ここいいか?」
「え?あ、はい…」

彼女に許可を貰ってからピアーズは向かい側に座る
彼が座ったのを確認するとナナはパンをちぎり口へと運んだ
ピアーズもフォークを手に取るとモグモグと食べ始める、ここでただ黙っているだけではいけないので何か話をしようとした時だった
自分が食べている様子をナナはじっと見つめていたのだ

「ど、どうかしたのか?」
「あ!いえ……ごめんなさい、私もう行きます!」
「え?まだ全然食べてないじゃないか!」
「い、いいんです!ピアーズさんはゆっくり食べていて下さい」

トレーを持ち上げてそそくさと去っていくナナの背中をピアーズは呆然と見送っていた
明らかに今の態度はおかしい…さっきのファイルを運ぶときでもそうだが彼女は自分を避けているようなそんな様子だった
もしかすると自分は彼女に嫌われているのではないだろうか
そう考えるとピアーズも食事が喉を通らなくなりトレーを持って立ち上がった


* * *

「ピアーズさん元気だして下さい」
「いいんだ、もう終わったんだ」

いじけるピアーズを部下たちが必死に慰めていたときだった
ピアーズに用事があったのかクリスがみんなの所へとやって来た
そして落ち込んでいる彼を見てクリスは察したようだった

「フられたのか?ピアーズ」
「隊長っ!!」
「そう落ち込むな…俺もお前に協力しに来たんだ」
「協力……?」
「あぁ、家族が悩んでいるのに放っておけるわけないだろ?」
「隊長……」

クリスの優しい言葉にピアーズだけでなく周りにいた部下たちも心に響いたようだ
そしてクリスの周りにみんなが集まる
まるで教師を慕う生徒たちのように、いや父親を慕う子供たちのようだった

「隊長!俺も好きな子がいるんです……」
「よし、ピアーズの事が解決したらな」
「たいちょ〜〜〜!!!」

自分も自分も、と次々に悩みを言ってくる隊員たちを慰めるとクリスとピアーズはさっそくナナの元へと向かった


中庭のベンチにナナは座ってため息をついていた
そんな彼女にクリスが声をかけてやれば彼女は微笑んで彼を迎える
そして近くの茂みにピアーズは隠れて様子を伺っていた
クリスの作戦はそれとなくピアーズの事を聞いてみる、といっていたがどうやって聞き出すのか…
彼ならばきっと上手く聞き出してくれるのだろう、とピアーズは期待していた

「ナナ、ピアーズの事どう思ってるんだ?好きか?」
(ストレートすぎませんかっ!?隊長っ!!!!!)
「え…ピアーズさんですか!?」

それとなくではなく単刀直入に聞き出すクリスの言葉にナナは戸惑いを見せた
身体をもじもじとさせながら彼女は頬を赤く染める

「その…さっきもなんですけど、ピアーズさんを見てると胸がこうドキドキって言うかもやもや〜ってして……隊長に言われてわかりました。私……好きなんです、ピアーズさんの事」
「本当か!?」
「え!?」

好きだと気持ちを告げられた嬉しさからか茂みからピアーズは勢いよく飛び出してきた
彼はそのままナナに詰め寄って両肩を掴んだ

「俺の事好きって……」
「はい……好きです、犬みたいで」
「……は?犬??」
「その…1週間ぐらい前から私を見つけては名前を呼んで駆け寄ってくるところとか『ご主人〜』って言ってるみたいだし、さっきの食事の仕方も犬みたいでもう本当可愛くて…っ!!」

優男作戦だったのだがナナにとっては飼い主に忠実に従う犬に見えていたようだ

「わかるぞナナ!ピアーズって犬っぽいよな!」
「ですよね!」
(アンタも乗るな隊長っ!!!)

会話を弾ませる二人をピアーズは恨めしそうに見つめる
その時彼女がこちらを向いて言いにくそうにしながら口を開いた

「あの……もしよかったらピア君って時々呼んでもいいですか?」

上目遣いでお願いしてくるナナにピアーズは断ることなどできなかった
次の日から恋人、ではなく犬として見られる事になったピアーズの恋はまだまだ続きそうだった





飛鳥様リクエスト夢です!ピアーズが最後かわいそうなことになりましたがいかがでしたでしょうか?ピアーズが駆け寄ってきたりとかガツガツ食べてるところ想像したら何か犬っぽいですよねー今後は彼女から犬ではなく男として見られるようにピアーズはまだまだ頑張らないといけませんね笑
飛鳥様企画参加ありがとうございますっ!!こんなのでよければもらってやってくださいっ!!
レイラの初恋
130408


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