柔らかな温もり


街を散歩していたパティが一軒の店のショーウィンドウにべったりと引っ付いて見ている女の子を見かけてクスッと笑うとその子に近づいていく
後ろから頭を撫でてやれば女の子は驚いてそちらを見た

「何してるのナナ?」
「パティお姉ちゃん…!」

パティに気がついたナナはショーウィンドウから離れた
彼女が見ていたものをパティが見てみればそこには大きなくまのぬいぐるみが飾られてあったのだ
なるほどナナはこれが気に入ったようでずっと眺めていたらしい

「可愛いぬいぐるみね!これ欲しいんでしょ?」
「……うん」
「ダンテに買ってってお願いすれば?」
「……おとーさん借金あるから言えない」

服の裾を掴んで身体をもじもじとさせるナナにパティはため息をついた
こんな小さな子供に気を使わせるなんてとんでもない父親だと
パティは彼女の小さな手を握り締めて事務所へと歩き出した

事務所にたどり着くなり中からレディの声が聞こえた

「この間ハミルトン家の屋敷で暴れたらしいじゃない」
「悪魔がそいつに取り付いて暴れたんだ、仕方ねぇだろ」
「でも向こうは弁償しろって言ってるわ、だから今回の報酬はゼロね」
「…たくっ、これだから金持ちの連中は勝手なことばかり言いやがる」

舌打ちをするダンテ
どうやら今回は収入がもらえなかったらしくまたしばらくはピザ生活が続く事になるようだ
帰ろうとしたレディはパティとナナの姿に気がつくと小さなナナの頭を撫でてそのまま出て行く。ダンテも娘が帰ってきたことに気がついて声をかけた

「どこ行ってたんだ?」
「…公園」
「そんでパティと会ったのか、腹減っただろ?すぐにピザ頼んでやるからな」

机に置いてある黒電話に手を伸ばしてピザ屋に連絡をするダンテ
ツケで払うと相手に告げているようだった。その様子にパティは頬を膨らませてダンテに文句を言ってやろうかと思ったのだがナナに服の裾を捕まれた
小さいながらにもわかっている、ケンカなどして欲しくないのだ
受話器を置いたダンテがパティに声をかける

「お前も食うだろ?」
「いらないわよ馬鹿ダンテ!」
「あぁ?イキナリ何だ」

ワザとらしく足音を立てて事務所から出て行こうとするパティをダンテは呼び止める
扉を開けたパティは振り返ると

「自分の子供に気を使わせるなんて最低な父親ね」
「は…?」

彼女の残した捨て台詞にポカンとしていたダンテはソファーに座っていたナナを見つめる
すると彼女は気まずそうに視線をそらした
訳がわからないダンテはため息をついた、ごまかそうとしているのかテーブルの下に置いてあったボロボロの人形を取り出してナナは遊び始めた


* * *

「パティにそんな事言われたの?」

近くのファミレスで仕事の話をしていたダンテはレディに話をした
自分がナナに気を使わせていると…
ダンテは母親のいない彼女の為に困った事があったらなんでも話せとは言っている
しかしそれでも娘は父である自分に気を使っているようなのだ

「ピザばかり嫌だって言ったんじゃない?パティに」
「……」
「…それよりあなた、また借金増えたわよ。どうするつもり?生活も苦しいんでしょ」
「だからこうしてお前に依頼がないか聞きに来たんだろうが」
「もうちょっと待ってちょうだい」

レディは伝票を持って立ち上がる、ダンテもだるそうに身体を起こして立ち上がった
二人でファミレスを出て道を歩いていたときだった
例のおもちゃ屋の前のショーウィンドウの所にナナがいた
相変わらずその向こう側にあるくまのぬいぐるみを見つめていたが、しばらく見つめてから彼女はその場を去っていく
ダンテとレディはおもちゃ屋に近づいてナナが見つめていたショーウィンドウを覗き込んだ

「へぇ可愛いわね……ナナ、このぬいぐるみが欲しいんじゃない?」
「欲しいなんて一言も聞いて……」

この時ダンテはすべてを察した
ナナはこのぬいぐるみが欲しくて仕方がないのだが借金をしている自分に気を使って言えないのではないだろうか?
そうだとすればパティに言われた言葉も全部辻褄が合う
ダンテはショーウィンドウに手を置いた、昨日ナナが遊んでいた人形も随分と前に買ってやったものでボロボロだった事を思い出す
彼はそのままおもちゃ屋へと足を運んだ


「ただいま」
「おとーさんおかえりなさ…」

帰ってきた父親の方向を向いてナナは目を見開いた
ずっとあのショーウィンドウの向こう側に飾られていたくまのぬいぐるみがダンテに抱えられて自分の目の前に現れたからだ
ふっ、と笑ってダンテは娘の座るソファーの横にぬいぐるみを置いてやる

「欲しかったんだろ?」
「おとーさん…」
「なぁナナ…お前が借金の事で気を使う必要はねぇんだ…つうか4歳のガキが借金の事理解してるっていうのもなぁ……まぁ俺が悪いんだが」

彼はため息をつくとぬいぐるみを挟んでその横に腰掛けた

「いいかナナ…これからは欲しいものがあったら遠慮なく俺に言え」
「でも……」
「でもじゃねぇ、さっきも言っただろ?お前が借金の事で気を使う必要はねぇ、俺の問題だからな……頼むからもっと甘えろ…泣いたり困らせたり、な?」

頭を掻くダンテにナナは微笑むと大きなぬいぐるみを自分の反対側に移してダンテに思い切り抱きついた

「ぬいぐるみありがとう…おとーさん大好き」

ぎゅうと抱きついてくる娘にダンテも嬉しそうに微笑んだ





奏様リクエストのアニダン親子夢です、ほのぼのになっているのかな…?父親をあんまり困らせるような事はしたくない娘ちゃん。だけどダンテはもっとワガママ言ってほしいし甘えて欲しいんですね。パティももっと甘えればいいのに!って言ってるといいですね
奏様企画参加ありがとうございます!こんなのでよければ持って帰ってくださいませー^^
約30の嘘
130402


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