苦しみはいつしか愛に


街から離れた場所にある工場からそこには似つかわしくない銃声が響き渡る
工場の人間達はウィルスに感染したらしく人の形をしているものもいるが自我を失ったもの、化け物に姿を変えた者達もいた
これを抑えるべく派遣されたBSAA、クリスの率いるチームが今彼らと戦っている
そんな彼を高い鉄塔の上から一人の女が見下ろしていた


* * *

カーテンの隙間から漏れる光でナナはゆっくりと目を覚ました
後ろに体温を感じて振り返れば目を閉じているクリスの姿があった
昨夜任務から帰ってきたクリスはシャワーを浴びて眠るナナのベッドに入り込み後ろから抱きしめる形で眠りについたようだった
彼の頬を優しく撫でてやればゆっくりと目が開かれるが眠そうだった
そのままクリスはナナに甘えるように彼女の首元に顔を埋めて唇を寄せる
無精髭がくすぐったくて彼女の身体がピクリと反応する

「クリス…くすぐったいわ」
「ん……」

そのままクリスは彼女の上に圧し掛かり唇を塞ぐ
彼からの口付けを受けながらナナはその逞しい背中に手を回した
その時家のインターホンが鳴り響き、残念という感じでナナがクリスに微笑んでやればベッドから抜け出して上着を羽織ると玄関へと向かう
扉を開ければクリスの部下のピアーズが立っていた

「あらピアーズ、おはよう」
「おはようございます、朝早くにすみません。隊長はいますか?」
「ピアーズか…どうしたんだ?」

部下の声が聞こえたのかクリスも服を羽織って奥から出てきた
どうやら仕事の話らしくクリスは彼を家の中へと招きいれた
入っていくピアーズの背中をナナは黙って見つめていた

「昨日の工場の件なんですが…どうやら薬だと嘘をつかれてウィルスを配られたそうなんです」
「なるほどな……」
「それで「クリス」

ピアーズの話を割って入ってきたナナ
彼女は着替えて化粧までしていたのでどこかに出かけるようだった
買い物に行ってくる、と告げるとクリスの頬にキスをして出て行く
そんな彼女をピアーズは鋭い瞳で見送った

「ピアーズ話の続きを…」
「はい…ちょうど良かったかもしれません、隊長。落ち着いて聞いてください」
「なんだ?」

きっと彼は驚く、信じたくないかもしれないだろうが情報が出た以上彼に話さなければならない
ピアーズは一呼吸ついてから口を開いた

「この事件…ナナさんが関わっている」
「…なんだと?」
「昨日の工場の事件…ウィルスを配ったのはナナさんだと言われてる。BSAAのアンタに近づいたのも組織の事を知るためだ」
「まさか…ナナが…?」

ピアーズから告げられた情報にクリスは首を横に振る
だがこれはBSAAが手に入れた情報なのだから間違いはない
落ちこむ彼にピアーズは話を続ける

「…明日、ナナさんはウィルスを売りつけるそうです。そこを抑えましょう、これ以上被害が広がらない為にも…あんたの使命を忘れないで下さい」
「……あぁ」

それだけ告げるとピアーズは家を出て行った
残されたクリスは握り締めた拳をテーブルに叩きつけた


* * *

その日の夜
何も知らないナナはいつもの様に夕食を作りクリスに振舞っている
彼女が本当にウィルスを売りつける悪者なのだろうか?とクリスは動揺を隠し切れない
全然食事に手をつけないクリスにナナは声をかける

「どうしたの?全然食べてないじゃない…調子でも悪い?」
「……そうだな、少し調子が悪いみたいだ」
「大丈夫?もう横になった方がいいわ」

寝室まで付き添いクリスをベッドの上に寝かせるとナナは彼の額にキスをして部屋を出て行こうとしたのだが彼に腕を捕まれた
どうしたのか、と見てみれば彼は真剣な眼差しで彼女を見つめている

「どうしたの…?」
「ナナ…俺はこれから先、何があってもお前を愛している」

ピクリ、と彼女の身体が反応する
その反応をクリスは見逃さなかった、動揺しているのだろう彼女も
明日…自分たちが出くわすかもしれない未来に
ナナは少し唇を噛んですぐに彼に微笑んだ

「……やーねぇクリスったら、今日はやっぱり変みたいね。もう休んで……おやすみなさい」

彼の手から逃れるとナナは寝室を出て行く
彼女は扉に背中を預けながら唇を噛んで明日の事を考えた


街から離れた廃墟へとナナは入っていく
ここで今日の取引の相手と会うことになっていたからだ
しかし時間になっても相手は現れない、代わりに現れたのはクリス率いるBSAAの人間だった
不思議と驚かなかった、こうなる予感は昨日していたからだ

「クリス……」
「ナナ……信じたくなかったが本当だったらしいな」

アサルトライフルを構えながらクリスは言う
傍にはピアーズもいて同じように構えてナナを睨みつけている
きっとピアーズがクリスに教えたのだろうと理解した

「……全部、仕組まれていたのか?俺と結婚した事も」
「……そうね。BSAAの情報を知るためにあなたに近づいた……知りたい事を知ればすぐに去ろうと思ったわ」

だがクリスと過ごしていく内にナナの中で段々とクリスを愛している事に気がついた
離れる事などできなくなるほどに
いつかは自分がウィルスを売っている悪者だと言う事も話そうと考えた事もあった
ナナは銃を自分の頭に向ける

「さよなら…クリス……」

目を閉じて引き金を引こうとしたのだがクリスはアサルトライフルを撃ってナナの手から銃を落とす
そしてそのまま彼女に近づいて力強く抱きしめた
抱きしめられたナナはどうして、と小さく彼に問いかける

「言っただろ?何があってもお前を愛してるって」
「…!!」
「もう一度やり直そうナナ……」
「クリス…っ!!」

涙を流しながらナナは力強くクリスに抱きついた

その後彼女はウィルスの出所をすべてBSAAに話した
そして人々の命を奪った罪を背負いながら彼女もBSAAに入りウィルスを撲滅する事を決意
今もクリスの横で幸せに暮らしている





アヴィ・キュリー様のリクエスト夢です!奥さんでありながら実はヒロインはバイオテロの主犯者……うーん私では思いつかなかった。いつも幸せイチャイチャばかり書いてるのでこういうのも楽しかったです^^うまくリクエストに添えられてるか不安ですが…こんなのでよければぜひ持って帰ってくださいませー^^25万企画にご参加いただきありがとうございます!!
彼女の為に泣いた
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