ダーリン・シック・ハニー・ショック
「hmm…ここが依頼のあった場所か」
地図を見ながらダンテが辿りついた先は廃墟と化した屋敷だった
数ヶ月前からこの付近で悪魔が出るとの話があり、何人か襲われた人間もいるので退治してほしいと依頼が来たのだ
悪魔絡みとなるとダンテは決して仕事を断らない、それに自分には養っていかなくてはならない妻もいる。愛用の銃を構えてダンテはニヤリと笑うと屋敷の扉を蹴飛ばした
* * *
「ふぅ…できました」
新作のケーキを作り終えたナナは綺麗に出来上がったのを見てほっと息をついた
奥からコーヒー豆を持ってきたロクサーヌがケーキの存在に気がついておっ、と嬉しそうな顔をした
「フルーツケーキか!上手そうだなっ!!」
「はい……よかったら試食してください」
「じゃあ食べるよ!」
引き出しからフォークを取り出して一口食べると甘い味が口の中に広がる
んまいっ!とロクサーヌが言えばナナは薄く微笑んでいるだけだった
「どうした?なんか顔色悪くねぇ?」
「え…?そう…ですか?」
「あぁ何か熱ありそうな顔してるぞ……ってナナ!!?」
彼女の体がふらついたのでロクサーヌは慌てて支えると近くの椅子に座らせる
その時タイミングよくレディが店にやって来た
「こんにちは……ってどうしたの?」
「あぁちょうどいい所に!ダンテのやつどこにいるか知ってるか!?ナナのやつ熱があるんだよ!!」
「わかったわ、彼に伝えてくる」
レディはそう言うと再び店を出て行った
ロクサーヌはナナをおんぶしてダンテの家まで送っていく事にした
* * *
最後に残っていた悪魔を撃ち殺すとダンテは息を吐いた
辺りには彼を襲ってきた悪魔の死骸があちこちに転がっている、しかし彼はそのすべてに止めを刺して自分は無傷で済んでいた
屋敷の外へと出て数分離れた場所に住んでいる依頼主の元へと足を運ぶ
ダンテが悪魔をすべて倒した事を知ると依頼主は大層喜んでアタッシュケースを彼に渡す
「hmm…確かに、また何かあったら呼んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
中を確認したダンテは満足そうに微笑むとそれを持って外へと出る
これだけあればしばらくは生活していけそうだ、早く自分の事務所へ帰ろうとした時だった。今着いたらしいレディと会った
ダンテはふぅ、とため息をついた
「悪いがこいつは渡さねぇぞ」
「そんな事どうだっていいわよ、早く事務所に帰りなさい。貴方の奥さんが熱でて倒れたのよ」
「ナナが…!?」
ナナが体調を悪くしたと聞いてダンテはアタッシュケースをレディに押し付けると近くに止めてあったバイクに乗り込んで猛スピードで走り出した
まったく、とレディも同じように彼の後を追いかけた
「38度……」
体温計を計り終えて見て見ればかなりの高熱だった
ロクサーヌに事務所まで送り届けてもらってから彼女には迷惑をかけるわけにもいかず帰ってもらった
「寒い……」
身体をぶるりと振るわせる熱が出たときは何故か変に寒気を感じる
身体は熱いはずなのに、熱が出たときはこれが嫌だと思う
ナナはそっと腹部を撫でた。そう、彼女のお腹の中には新しい命が宿っている
少しお腹が膨らんできたか、といった感じだった
「ごめんなさい……貴方も苦しいですよね」
「ナナ!!!」
バンッと大きな音を立てて部屋の扉が開かれた
見れば大慌てで帰ってきたらしいダンテがいた、彼はベッドで寝ているナナの側へと慌てて駆け寄り熱がある頬へと触れる
「ダンテさん…どうして?」
「レディの奴から聞いたんだ、熱があるって?」
「はい……」
「薬あっただろ?飲むか」
薬と聞いてナナは首を横に振った
「駄目です……赤ちゃんにも影響が出てしまいます。なるべく自然治癒で治すのがいいんです」
「……けど」
「大丈夫です……」
絶対に飲まないという瞳でダンテに言った
赤ん坊を守るというようなもうすでに母親のような顔になっているナナの姿にダンテは何も言えなくなった
「どう?ナナの様子は?」
「……つらそうだった、けど薬は飲まないってよ」
赤いソファーに座るダンテの背中をレディは叩いた
いてっ、と声を上げるダンテは何をするんだとレディを睨みつける
「それだけ?放っておくの??」
「…あの様子じゃ病院にも行かないだろ」
「そうじゃなくて!彼女の為にチキンスープぐらい作ってあげなさいよ!」
「料理したことないんだぜ?」
「私が教えてあげるわよ!さっさとキッチンに来なさい!たくっ…何弱気になってるの」
さっさとキッチンへと向かうレディの後をダンテは渋々と言った様子で追いかける
冷蔵庫から材料を出す彼女にダンテはまた口を開いた
「ちゃんと上手くできるか…?」
「私が教えるんだから大丈夫よ」
「けど…これで余計にナナの体調が悪くなったりしたら……」
「ぷっ…何言ってるのよ!悪魔も恐れるデビルハンターが聞いて呆れるわ」
「うるせぇな…不安なんだよ」
罰が悪そうに髪の毛をバリバリと掻くダンテにレディはくす、と笑う
悪魔が恐れる男が一人の愛した女の前では弱くなり、どうしたらいいのかわからないと小さな子供のようになる。そこら辺にいる人間の男と何も変わらない、それが彼のいい所でもあるとレディは密かに思った
* * *
「おーいナナ」
「ダンテさん……?」
ふと鼻を掠めたおいしい匂いに気がついたナナは部屋に入ってきたダンテを見ると彼はトレーに載せたチキンスープを持ってきていた
体を起こした彼女の膝の上にそれを乗せる、ナナは少々驚いたような顔でダンテを見つめた
「これ…ダンテさんが作ったんですか?」
「あ、あーまぁ…レディに教わりながらだけどな」
「……嬉しいです、いただきますね」
笑顔を見せた彼女にダンテは少々驚きながらも自分の作ったスープに口をつけるナナの様子を見守る
「ど、どうだ?」
「おいしいです…今まで食べたチキンスープの中で一番です!ダンテさん私の為に一生懸命作ってくれたんですよね?ありがとうございます」
無理して言っている、という様子でもなかった。本当に心からそう言っていると感じたダンテはナナを抱きしめて唇を塞いだ
舌を絡めてやればやはり熱のせいかいつもより熱く感じる
「んんっ…ぅ」
「まだ…熱いな、なぁ念のため明日は病院行こうぜ。俺も色々医者に聞きたいしな」
「はい…」
ダーリン・シック・ハニー・ショック
睦月様リクエスト夢でした!なんかダンテが変に弱気になっててちょっとイメージ崩れてしまったような……うーんダンテは弱気になってもかっこいいダンテじゃないとなぁ難しい。あ、連載の設定で書かせていただきました。次の日にダンテはヒロインと病院に行って医者に色々と聞いているといいですね、ダンテにも夫して父親としての自覚が身についてきてるといいです^^
睦月様こんなのでよければもらってやってくださいませー!企画参加ありがとうございますっ!!
誰そ彼
120930