アイラブユーが伝わらない


「んー……」

呻き声を上げながら寝返りを打つ、そしてふと目を開けて自分の部屋ではない事にナナは気がついた
そうここはダンテの事務所だ。昨日呼び出されて夜は恋人同士なら当たり前の愛を確かめ合ってそのまま寝てしまったようだった

「あー……仕事遅刻」

側においてあった時計を見てため息をつく
床に散らばってある皺くちゃになった下着や服を取って身なりを整えると階段を降りて行く
1階へ降りたところでシャワーを浴び終えたらしいダンテと遭遇した

「おはようbaby、よく眠れたか」
「えぇ…おかげで仕事は遅刻よ。どうして起こしてくれなかったの?」
「気持ち良さそうに寝てたからな」

ニッと笑ってタオルで頭を拭くダンテ
彼女はそのまま事務所の外へと出て行こうとすると声をかけられた

「出るのか?」
「遅刻でも行かないとクビになっちゃう」
「いいじゃねぇか、クビになったら専業主婦としてここに住めばいい」
「え……」
「部屋……お前の為に空けてあるんだけど?」

そう、ダンテの寝室の他にも部屋はいくつかある
倉庫となっていて全然使われていない部屋が、それよりもどういう意味なのだろうか?
今のはプロポーズなのだろうか?彼と付き合い始めて半年ぐらいだというのに
ナナは何も答えずに事務所を出て行った


仕事場に着いてからまずは上司に謝って、少し説教されて仕事を始める
しかし仕事がなかなか手につかなかった。それもそのはず今朝ダンテの事務所を出るときに言われた彼のあの言葉がどうしても気になってしまったのだ
あれは本気で言っているのだろうか?だとしたら嬉しいのだが、不安もある
ダンテは昔からモテていて遊び回っていたとも聞いた。今は落ち着いたらしく自分にしか目がないとは言っているのだが、人はそんなに簡単に変われるとも思えない
自分がこうして仕事に出ている時だって他の女と遊んでいるかもしれない、その上で結婚なんてしたらややこしくなる

「はいコーヒーどうぞ…」
「あ、あーありがと…」
「顔色悪いみたいですよ?大丈夫ですか?」

コーヒーを持ってきてくれた後輩に大丈夫、と手を振った
そしてカップに口をつけたときに普段慣れているはずのコーヒーの匂いが何だか気持ち悪く感じてナナは急いでトイレへと向かった
トイレで思いっきり吐き出した彼女は自分の体はどうしてしまったのか、と口元を押さえながら手を洗う。鏡に映った自分を見ればまったく血の気がなく青ざめていた
もしかして何か大きな病気にでもかかってしまったのだろうか?

「あれ…?そういえば……」

ここ最近生理が来ていない事にナナは気がついた
ただ体調が悪くて来ていないだけなのだろう、と思っていたのだが数ヶ月は来ていない
まさか、とナナは目を見開いた


* * *

「あら、ダンテ久しぶりじゃない」

店内が妖しい空気で包まれているバーにダンテはやってきた
ここに来るのも久しぶりでダンテに目をつけていた女達もすぐに彼の所へとやってきた
ピンク色のソファーにドカッと座りジン・トニックを頼む
正面に目をやれば舞台の上でポールに掴まりグルグルと踊りながら裸になっていくストリッパーの女達がいる、それを見ながら周りの男は声を上げていた

「ねぇダンテ…今夜事務所に行ってもいい?」

横に座った女――レイラがダンテの耳元で囁いた
が、ダンテは首を横に振って駄目だと答えた

「まだあの真面目そうな女と付き合ってるの?あんなのダンテには似合わないわよ」
「俺にも選ぶ権利はある」
「あっちのテクだって下手そうじゃない、あたしのが上手いし満足させてあげられるわ」

ダンテの胸板に手を這わせる女の手をダンテは掴んだ

「ヤりたいだけの関係なら俺はいらない、他をあたりな」

ちょうど運ばれてきた酒をダンテは一気に飲み干すと店を出た
レイラは出て行く彼の背中に向けて中指を立てた


ナナと初めて出会ったのは確か真夜中だった
道端で酔いつぶれて寝ていたダンテを他の人間は捨てていく、彼の事を狙っている女だったら捨てていかないのだがその日に限って珍しくそういう類にも拾われなかった

「大丈夫…?酔ってるの?」
「…おー……」
「家は近く?運んであげるわ」

彼女は自分の上着を彼の背中にかけて道路付近まで出てタクシーを呼んだ
その背中を虚ろな目でダンテは見ていた
この女は珍しく自分の事が目当てで拾ってくれた女ではなさそうだった
事務所に着いてからも朝まで一緒にいてくれた。大丈夫、と声をかけてくれ朝食まで作ってくれた
見ず知らずの他人にここまでしてくれる彼女の優しさにダンテは惹かれていた
そんな彼女だから守ってあげたいとも思うし、一緒にいるならナナがいいとダンテは思い始め彼女を口説いて恋人になることができた


* * *

「ぁ……」

トイレに入っていたナナは妊娠検査薬を見て目を見開いた
陽性と反応が出ている。そう彼女は妊娠していたのだ、相手はもちろんダンテだ
どうしよう…と不安になった
結婚の約束さえもしていない関係なのに子供ができたと彼は知ればどうするだろうか?
しかし今朝のダンテの言葉が本気だったら喜んでくれるのではないだろうか?
だけどわからない…本気じゃなかったら子供なんてめんどうだと捨てられてしまうかもしれない
とりあえず今日は帰ろう、とナナはトイレを出た



「!?」
「よぉ…」
「ダンテ…どうしてここに?」

仕事場を出れば目の前にダンテがいた、今は会いたくなかったのに
彼はゆっくりとこちらへ近づいてくる

「今日は早いんだな…どうしたんだ?」
「え、と……仕事が早く片付いたから……」
「……そっか、なら事務所に来てくれよ。話があるんだ」
「え…?あ、明日じゃ駄目?」

正直このまま彼と話していて平常心でいられるか不安なのだ
だがダンテはどうしても今日だ、と言い張るとそのままナナの手を引いて歩き出す
あまり強く引っ張らないで欲しいと思った。眩暈がする、耐えられなくなってその場に跪いたナナにダンテは目を見開いた

「おい!どうしたんだ!?」
「だ、んて……」

顔色がとても悪い、ダンテはナナを抱きかかえると屋根の上を飛び移りながら事務所へと向かった


* * *

ベッドに寝かせたナナをダンテは心配そうに見つめる
そんな中ゆっくりと目を開けた彼女を見て声をかける

「ナナ…よかった、目が覚めたんだな」
「ダンテ……」
「医者をさっき呼んだ……お前、妊娠してるんだって?」

妊娠、と聞いてナナは目を見開いた
ダンテに妊娠している事がバレてしまった、どうする…彼はどう返すのだろうか

「何で黙ってたんだよ」
「今日…私もわかったの……ちゃんと話そうと思ってたわ」
「それでどうするんだ?」
「どうするって………ダンテが迷惑だっていうなら中絶するわ」

ダンテはそれを聞いてため息をつくと両手で彼女の両頬を挟んだ

「何でだよ、俺が嫌だって言ったらどうするんだ?」
「え……」
「俺は今嬉しいんだぜ?俺とお前の子供ができたって聞いて……」
「だ、だって……私たち付き合ってるだけで結婚とかそういうのは…」
「ハァ!?今朝言っただろ!部屋を空けてるって、お前あれ冗談で言ってると思ってたのか?」

きょとんとするナナにダンテはまたも大きくため息をついた
彼女からしてみれば流すような感じだったのかもしれない
真剣に言わなければ女には伝わらない

「俺は…お前と出会う前は色んな女と遊んでたよ。けどあの日お前に出会ってから俺のものにしたいと思ったし、これから先も一生側に置いておきたいのはナナだけだ」
「ダンテ……」

彼の気持ちが伝わったナナは涙を零した
そんな彼女にキスをしてダンテは優しく力強く抱きしめた

「俺と結婚してくれ……それで子供も産んでくれよ」
「はい…っ…!」





めちゃくちゃ長くなってしまってすみません…っ!!切甘…になっているでしょうか?ダンテは一応デビルメイクライ3のダンテをイメージして書きました。遊び人の男だったって聞いたら今自分を愛してくれていても不安になりますよね…って考えて書きました
喬様!今回は15万企画にご参加下さりありがとうございますっ!!こんなのでよければもらってやってくださいませっ!!

エトワール
120928


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