それでも愛することをやめられない


みんなが眠っている夜の中、子供の頃――司馬昭はよくなまえの部屋に忍び込んでは彼女を連れ出して外に遊びに出ていた

「見ろよなまえ!空を!!」
「わぁー綺麗っ!!!」

夜空には月といくつもの星がキラキラと輝いていた
先程まで眠そうにしていたなまえも今はしっかりと目を開けて星を見つめている
そんな彼女を見つめながら司馬昭は口を開いた

「あのさ…なまえ、大きくなったらお前をおれの嫁にしてやるよ」
「ほんと!?」
「あぁ、おれなまえの事だいすきだからなっ」
「わたしも昭の事すきだよ!やくそくだからねっ!!」

お互いの小さな手が伸ばされて小指を絡ませる
約束の証だ、なまえは嬉しそうに微笑んで再び星を見つめた
未来がすごく楽しみだ。この先もずっと司馬昭と星を見続けていたい



* * *

「司馬昭殿」
「ん?なんだなまえかよ、なんだよ改まって」
「……ご結婚おめでとうございます」

頭を下げて言うなまえに司馬昭はあぁ、と小さく答えながら頭を掻いた
あの約束から数十年の月日が流れた
小さい頃に交わされた約束は叶えられなかった、彼はなまえではなく別の女性と結婚するのだ
頭を下げている彼女は今どんな顔をしているのか、司馬昭は顔を上げさせた

「…わざわざ言いに来てくれたのか?」
「はい…」
「…そっか、でも結婚するからって敬語はやめてくれよなまえ」

結婚してからも馴れ馴れしく彼を呼んでは、彼の結婚する相手が嫌がるのではないだろうか?
自分なら嫌だ、自分以外の女が司馬昭に馴れ馴れしくするのは「昭」と呼ぶのは
星を一緒に見上げるのも……

「敬語をやめたら……結婚しないでくれますか?」
「え…!?」
「っ!!?ごめんなさい…失礼しますっ!!」

その場を去るなまえの背中を司馬昭は追おうかと思ったがやめた
それはもう自分の役目ではないからだ
純粋な彼女はきっと小さいことに交わした自分との約束を信じていたのだろう


司馬昭から逃げるようにしてやってきた場所は小さい頃に約束を交わした場所だった
なまえはその場に座り込んで星を見上げる
あの時と何も変わらずに綺麗に輝いている、欠けてもいない
涙が頬を伝った

「昭……」

貴方が一緒じゃなきゃ全然綺麗に見えない
残酷なほど月や星はこんな私を綺麗に照らす……


* * *

「え…?」
「蜀へ逃亡しようと思うんだ…俺、前からあんたが好きだったんだ…一緒に来てくれないか?」

物陰でヒソヒソと繰り広げられる話
夏候覇は前々からなまえの事が好きだったそうだ、そして彼は彼女が司馬昭の事が好きであの夜一人で泣いていたことも知っていた
彼と一緒に蜀に行けば晋を…司馬昭を裏切ることになってしまう

「……いいよ」
「え!?ほ、本当か!!?」

コクリ、となまえは頷いた
もう構わなかったこれ以上失って困るものは何もないのだから


馬に跨り小さい頃から育った国を夏候覇と一緒に飛び出した
後ろを振り返ってみれば門の上に司馬懿や司馬師……そして司馬昭がいた
彼の姿に胸が締め付けられたがなまえは前を向いた



(だけど私は一生あの星を見続けるのだろう)



愛子さんリクエストの司馬昭夢でした!書きたい昭の夢でいいとのことだったので…シリアスでこういう話が書きたかったんです!!12万企画参加ありがとうございます!こんなのでよければ持ってかえってくださいー^^
彼女の為に泣いた
120630


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