色々と悩んで大きくなりなさい
※おちびちゃんが中学生になってます、の未来話です
「このままじゃ希望している高校も危ないですよ」
担任に言われた言葉にジョナサンは困ったような顔をしていたのだがなまえはどこか遠くを見ているような目をしていた
【色々と悩んで大きくなりなさい】
学校からの帰り道前を歩いているなまえにジョナサンが声をかける
「何かあったのかい?あんな酷い成績初めてじゃないか」
「…別に何もないよ」
「何もないなら夏休みは毎日勉強しなきゃ駄目だよ」
「わかってるよ…」
頬を膨らましてなまえはそそくさと歩いていく
小さい頃はとても素直で可愛かったのだが今は思春期真っ只中
大きくなるにつれてやはり反抗してきたりするようになった、しかも今年は受験生の年だ
親代わりに育ててきた自分としては将来の道をしっかりと決めて欲しい
妹の背中を見つめながらジョナサンは苦笑していた
「ただいまー」
「パパ!なまえお姉ちゃんおかえりっ!!」
自宅に帰ればジョナサンの息子のジョージが目を輝かせて入り口まで迎えに来ていた
優しく頭を撫でるジョナサンの横を通り抜けるなまえの手をジョージは掴んだ
「あそぼう!」
「…ごめんねジョージ、私勉強しなくちゃいけないの」
いつもと様子が違うなまえに察したのかジョージは素直に手を離した
階段を上っていく彼女の背中を寂しそうに見つめる息子にジョナサンは優しく声をかけた
「大丈夫、後で遊んでくれるよ。ママは?」
「ママはおかいもの!」
* * *
――ごめん、他に好きな子がいるんだ
ベッドの上で寝転んでいたなまえの頭の中で思い出される苦い映像
初めて男の人に告白をしてみたのだが振られてしまった
受験の時期に何をしているのかと言われるのかもしれないが好きになってしまったものは仕方がなかった
だが結果的には振られてしまった、悲しいしもう何もしたくなかった
シーツをぎゅうと握り締めて唇を噛んだ
「あれ?なまえは?」
夕食の時間になっても現れない事に気がついたジョナサンがエリナに尋ねた
「声をかけたのだけれどいらないって……」
「そうか…」
「……なまえちゃん。私にも何も話してくれないの、あのくらいの年の女の子は色々と難しいかもしれないわね」
苦笑するエリナにジョナサンは深くため息をついた
夏休みに入ってから数日経つがなまえはやはり勉強に手がつかなかった
部屋の扉がノックされて返事をすれば徐倫が入ってきた
「久しぶりね」
「徐倫!帰ってきたの!?」
「あんたが元気ないって聞いたからね」
結婚してから家を出て行った徐倫が久々に家に帰ってきたことに喜んでいたが自分の事で帰ってきたのだと知り、気分が下がった
きっとジョナサンが連絡したのだろう。余計な事をされたと気分が悪くなった
「で、どうしたの?女同士だし気軽に話してよ」
「好きな男の子にでも振られた?」
「!」
「図星ね…あんたぐらいの年齢だったら恋愛の一つや二つおかしくないもの」
図星を突かれたなまえはそのまま椅子にゆっくりと腰をかけた
何となくいいな、と思い始めたのがきっかけだ。そこから色々と話すようになって段々と彼が好きだと実感していった
だけど自分の片思いで相手はなんとも思っていなかったのだ
「……好きだったの」
「うん」
「振られてから何も手につかなくなっちゃったの……どうしたらいいの?」
「……新しく恋愛しなさい!」
肩をバシッと叩かれてなまえは目をパチパチとさせる
「男なんてたくさんいるのよ、そんなヤツのことはさっさと忘れちゃいなさい」
「…徐倫が言うとなんか説得力あるね。昔ロメオって人に「あー!!その話はやめて!!今はアナスイとアイリンがいて幸せなんだからっ!!」
徐倫が昔男に振られて泣いていたとき幼い自分がよく頭を撫でて励ましていた記憶がある
けど次の日にはすっかり立ち直っていた
「それにほら…あんたにはジョルノがいるじゃない」
「!?ジョルノは違うよ!…かっこいいけど年離れてるし…」
「酷いですねなまえは、僕は本気なのに」
突然聞こえた声に部屋の入り口を見ればジョルノが立っていた
彼はイタリアに行ったはずなのにどうしてここにいるのか驚きを隠せない
近寄ってきたジョルノはなまえを引き寄せた
「僕がいるのに他の男を好きになったんですか?悪い子ですね」
「てめぇぇぇ妹に触るんじゃねぇぇっ!!!」
ジョルノに向けて回し蹴りが飛んできたのだが彼はそれをあっさりと交わした
ジョセフ、承太郎、仗助、ジョニィがそこにいたのだ
次々と帰ってくる兄たちに一体どうしたのかとなまえは声をかけた
「なまえが落ち込んでるって聞いたんでな……」
「そしたらジョルノの野郎に抱きつかれてるしよぉ〜」
「慌てて帰ってきたんだ」
ジョセフと仗助はジョルノと睨みあっていた
この二人は特にジョルノがなまえに近づくのが許せなかった、昔はそうでもなかったのだが大きくなるにつれて許せなくなっていった
久々に兄弟が集まったこの光景になまえは思わず笑い出した
「なまえ?」
「…ありがとうみんな、私の為に帰ってきてくれて……もう大丈夫だよ」
妹の笑顔に兄弟たちは微笑んだ
* * *
「ジョナ」
「なまえ?」
ジョージを寝かしつけていたジョナサンの元へなまえがやってきた
彼女はその場に正座をすると口を開いた
「反抗したりしてごめんなさい、私ちゃんと勉強する」
「うん…」
「私…本当は寂しかったんだと思うの。今日みんなが帰ってきてわかった、大きくなっていくにつれてみんな家を出て行っちゃうし…小さい時は何か悲しい事があってもみんなが励ましてくれたから引きずる事はなかったの。ジョナも…結婚しちゃってジョージやエリナさんに構ってて…自分の居場所がないって思ってた」
「…そうだね。なまえ、昔と同じように何かあったら遠慮なく相談してくれていいんだよ?僕に言いにくかったらエリナでもいいし、他の兄弟だって構わない。みんななまえの為なら駆けつけてくれるよ」
「うん……ありがとうジョナ」
* * *
「う〜ん…」
お昼寝から目を覚ましたなまえ(3歳)は目を覚ました
変な夢を見ていたような気がするな、と思いつつ起き上がってみれば居間から大きな叫び声が聞こえたのでそちらに向かった
「ちくしょぉぉぉぉロメオのやつふざけんじゃないわよぉぉぉっっっ!!!!」
「落ち着いて徐倫」
「じょりーんどうしたの?おなかいたいの?よしよししてあげりゅね」
おちびちゃんが中学生になったら…夢オチですが思春期なので色々と悩んでいるといいですね。そして妹の為に世界のあちこちから駆けつける兄たちはさすがです
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