お金に変えられない物が世の中にはある


いつも通っている駄菓子屋でお菓子を買ったなまえはお気に入りのがま口のサイフから10円取り出して店のおばさんに渡した


【お金に変えられない物が世の中にはある】


10円を差し出すなまえだがおばさんは首を横に振った

「今日は特別にタダであげるよ、いつも買いに来てくれるからね」
「でもじょながちゃんとわたしなさいって」
「いいのよ〜今日は特別」
「!ありがとーおばさん」

笑顔でお礼を言うとなまえはその場を去る
だが角を曲がったところで小さな石に躓いてしまい派手に転んだ
それと同時に手に握っていた10円玉が転がっていく
ゆっくりと起き上がって10円を拾おうとしたのだが小さな何者かにそれを先に取り上げられてしまった

「ミツケタゾ!しししっ!」
「!…あ、だめだよ!かえしてー」

そのまま10円を頭に乗せて走っていくそれをなまえは必死に追いかける
茂みの中に飛び込んだので彼女も同じように飛び込めばデカイ体をした身体が見えた
彼の側には先程自分が追いかけていた小さな生き物が何十匹といた
そしてそれぞれ街で拾ってきた小銭を持っている

「みんな〜よくやっだど!これでおらは大金持ちだ〜」
「…こんにちは」
「!?だ、誰だど!?」

後ろから突然声をかけられて男の子は慌てて振り返る
振り返れば茂みから顔を覗かせているなまえと目が合いほっ、と安心したように息をつくと茂みの中からなまえを出してやった

「おらに何か用?」
「なまえの10えんかえして、さっきころんだときにそこにいるこがもっていったの」
「え?そうなのか?それは悪かったど、はいお詫びに100円やるど」

謝る少年は100円をなまえの手に差し出すのだが彼女は首を横に振った

「10えんだよ?なまえ10えんかえしてほしいの」
「お詫びにやるんだよ」
「だめだよなまえ100えんもらうときはなにか"いいこと"したときにもらうの。だから100えんいらない、おにいちゃんはいいことしてこんなにおかねもらったんでしょ?」
「え!?ま、まぁ……そうだど……」

本当は自分のスタンドを使って街中に落ちているお金を拾い集めているなどと小さな子供に言うのはさすがに無理だった
目を輝かせたなまえは彼の手を握った

「だったらなまえもおにいちゃんと"いいこと"する!」
「えぇーーー!!?」


* * *

「しげちーはやくぅー!」

さっさと先を歩いていくなまえの後を着いていく重ちー
いいことをしに行こうと彼女に連れられてやってきたのは岸辺露伴の家だった
家のインターホンを鳴らされて出てきた露伴は露骨に嫌そうな顔をした

「クソッタレの妹か、何の用だ」
「ろはんせんせーなにかこまってることない?」
「ないね、仕事中なんだ帰れ」

扉を閉めようとしたのだが露伴の足にしがみ付くなまえに彼は戸惑った
このままでは帰りそうにない
露伴は何かを思い出すと再び扉を開けた

「……タンスの隙間にペンが落ちたんだったな」
「!しげちーいこっ!」
「う、うん」
「あ、待て!勝手に入るな!」

先に入っていくなまえの後を露伴は追いかける
露伴の仕事場に入ってくると彼は一つのタンスを指差す、どうやらその下にペンが落ちたようだった
重ちーはさっそく自分のスタンドのハーヴェストを出すとタンスの下に潜り込ませてペンを拾いに来させた
それを見ていた露伴はほう、と感心したように声を出しペンを拾った

「…なかなかやるじゃないか」
「ろはんせんせーなまえいいこ?」
「君じゃなくて彼がな「ミツケタゾ!」

ふと露伴が目をやった先には彼のサイフを持ったハーヴェストがいた
彼は慌ててサイフを取り上げた

「僕のサイフに何してるんだっ!!触るんじゃないっ!!」
「し、しまったど(ついクセで…)」
「お前たち!良い事するフリをして本当は金を盗もうとしたんじゃないのか!?さっさと出て行けっ!!」

露伴に追い出されてなまえはしゅん、となるとしげちーに口を開いた

「しげちーひとのおかねぬすんじゃだめっ!」
「わ、悪かったど…」

また良い事しに行こう、と先に歩き出すなまえの背中を見て重ちーはさっと自販機の陰に隠れた
このまま彼女に付き合っていては街中に落ちているお金を探す事はできない

(なまえちゃんには悪いが、ここは逃げさせてもらうど…)
「きゃー!誰か助けてっ!!」

女性の悲鳴が聞こえて重ちーとなまえはそちらを見る
苦しそうに呼吸をしている男性が地面に倒れていた、どうやら心臓発作を起こしているらしい
助けを呼ぶ女性だがその場には重ちーとなまえしかいない
なまえは重ちーに必死にしがみついた

「しげちーたすけて…」
「ぉ……ぁ、わかったど!」

重ちーはたくさんのハーヴェストを出すと男性を担ぎ上げてそのまま病院まで運んでいく
医者が言うには彼が連れてこなければその男性は助からなかったと言う
一命を取り留めた男性は何度も重ちーにお礼を言った

「ありがとう、本当にありがとう」

涙を流しながら言う男性の言葉に重ちーは心を打たれた


* * *

「しげちーいいことしたね」
「うん……お金もらわなくても感謝の言葉を言われるってすごく気持ちいいんだなー」

病院からの帰り道、重ちーと手を繋いで帰るなまえ
言葉だけのお礼でも十分気持ちがいい事に気がついた
と、そこに仗助と億泰が通りかかった

「あれ?重ちーとなまえじゃねぇかよ」
「じょーすけ!おくやす!」
「重ちーちょうど良かったぜ!あの自販機の下に金見つけたんだよ!とってくれねぇか?」

億泰に言われたのだが重ちーは首を横に振る
理由を尋ねられて重ちーは先程の病院での出来事を語った
それを聞いた仗助は感心したように頷いた

「そうか…重ちーも金だけがすべてじゃねぇって事学んだのか」
「うん!おら生まれ変わったど!」
「ちぇ〜まぁお前がそう言うんならしかたねぇけどよ……あーあでも5000円落ちてたのはもったいねぇよな」

億泰の金額を聞いて重ちーの身体がピクリと反応する

「ご、5000円?」
「あぁ札じゃねぇけどよ…この自販機の下にたくさん溜まってんだよ。かき集めたらそんぐらいだろうなーって……」
「………」
「ミツケタゾ!」

声が聞こえて振り向いてみれば自販機の下からハーヴェストがたくさん出てきた
みんな小銭を集めており、仗助はそれを見て重ちーの頭を叩いた


後日
(じょな、10えんちょうだい)
(この間のはどうしたんだい?)
(はーべすとにとられちゃった…)


重ちーのスタンド欲しいです
130311


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