本もいいけど、人の話もね


街にある本屋にやって来たのはおなじみのジョースター家の兄弟何人かと末っ子のなまえだった


【本もいいけど、人の話もね】


本屋に入るなりなまえは一緒に手を繋いでいたジョセフに離すように言う
手を離したジョセフだがすぐに妹の小さなリュックを掴んだ

「なまえちゃーんどこに行くんだ?」
「えほんよんでくるの!」
「破いたりするんじゃねぇーぞ」
「うんっ!」

約束する妹の小さな額にキスをしてジョセフたちは妹の背中を見送る
それを見送ると同時に聞こえたのが大きな声で泣く子どもだった
側には困った顔をしてベビーカーに手を置いている母親の姿があった

「いやあああぁぁあ〜えほんよむのぉっ!!」
「今日は用事があるから駄目よ」

母親に促されてその子供は泣きながら店を出て行く
それを見ていたジョナサンがくすっ、と小さく笑った

「どうしたんだ?」
「いや…ちょうどなまえにもあんな事があったなーって思って…」
「あー確か3歳ぐらいの時だっけ?」


兄達はなまえがもう少し小さかったとき…本屋での出来事を思い出した



* * *

数年前

「参考書はこれがオススメだよ承太郎」
「ほう…」

本屋に参考書を買いにきていたジョースター家
ジョニィが指をさした参考書を手に取り中を見る承太郎と漫画のコーナーに行こうとしているジョセフに気づいてジョナサンが釘をさす

「ジョセフ、漫画は駄目だろ」
「ゲッ!!…ちょっとぐらいいいじゃねぇか」
「何しに来たんだてめぇは……」
「あれ?なまえは?」

妹の姿が見えないことに気がついたジョニィはきょろきょろと辺りを見回す
承太郎は舌打ちをすると児童書が置いてある場所へと向かったので他の兄弟たちも後を追った
するとなまえは何冊も本を開いて一生懸命読んでいた、最近の児童書は音が鳴ったりと色々と凝っているため子供達はすぐに夢中になった

「なまえ、勝手に行動するんじゃねぇ」
「じょうたろ!…これかって」

承太郎に気がついたなまえはニコッと微笑んで一冊の絵本を彼に見せる
だが眉間に皺を寄せて彼は首を横に振った

「駄目だ、この間買ってやっただろ」
「あれはおとならないもん…これはおとなるんだよ?」
「音が鳴ろうが鳴らないが関係ねぇ、駄目だ。元の場所に戻すんだ」
「……や」

その絵本を胸にぎゅう、と抱いてなまえはべそをかき始める
そしてジョセフが妹の側に駆け寄って承太郎に向けて口を開いた

「いいじゃねぇか一冊ぐらい、なまえ!兄ちゃんが買ってやるぜ」
「ほんと!?」
「駄目だ甘やかすんじゃねぇ、もう帰るんだ。早く元に戻せ」
「…や、いやいやああああぁぁぁっ〜!!!」

本を取り上げられたなまえは大きな声で泣き出して承太郎の足にしがみついた
しがみつかれても承太郎は本を元に戻した
それを見て彼女は益々大きな声で泣き出してしまい、ジョナサンやジョニィが声をかける

「なまえ、買ってもらったのは本当なんだから我慢しなきゃ」
「あれはおとなるの…っ!このあいだのはおとならないもんっ〜!!」
「なまえ、この間のでしばらくは絵本買わないよって約束したじゃないか」
「うえええぇぇぇぇっっ…!!!」

嫌だ嫌だと首を横に振る妹はジョナサンから離れて再び絵本を取り出して兄達に買ってくれと訴える
ジョセフはどうするんだ、と承太郎を見る
彼は相変わらず眉間に皺を寄せたままで深くため息をつくとなまえに手を差し出す

「帰るぞ……帰ったらこの間の本読んでやるからよ」
「いやあぁぁ…これかって!これかってじょうたろぉぉっっ!!」
「……本気で怒られたいのか?」
「いやああああぁぁっ!!!」

承太郎はなまえと目線が合うようにしゃがみこんで再び口を開いた

「……なまえ、このままおとなしく帰ってしばらくいい子にして過ごすって約束できるんなら……その本買ってやってもいいぞ」
「…………やく、そくする…っく…」
「ならこのままその本を元に戻せ。数日間俺との約束守れたら買ってやる」

言われて手に持っていた絵本を元の場所に戻しなまえは承太郎に抱っこされる
それを見ていた兄達も目を細めて見ていた



* * *

「懐かしいなー…あん時は数日間ビックリするぐらい聞き分けがよかったもんなぁ」

手伝いをすべてやったなまえの姿を思い出してジョセフは笑った
そして彼らはそんな話をしながら児童書のコーナーへと向かえばあの時より少し大きくなった妹の背中が見えた
彼女の小さな頭に手を置けば大きな目が兄の姿を捕らえて笑顔になった

「みんな!」
「帰るぞなまえ」
「兄ちゃんたちの用事は終わったからよ」
「うんっ!」

なまえは読んでいた絵本をちゃんと棚に戻してジョナサンと手を繋ぎ、もう片方の手はジョセフと繋いだ
今では買ってくれなどのわがままを言わなくなりちゃんと元あった場所に戻すまでに成長した

「何の本読んでたんだい?」
「んーとね、あかずきんちゃん」
「欲しくなかったのか?その本?」
「じょりーんがね、このあいだおはなししてくれたからいいの!あとねしらゆきひめとかしんでれらとかみにくいあひるのことかなまえしってるよ!」
「…そんなにたくさん本持ってたのか?」

知らない間にそんなに買っていたのか、と承太郎は苦笑した
だがなまえは首を横に振る

「じょなもじょせふもじょうたろうもじょうすけもじょりーんもじょにぃもみーんながおはなししてくれんだよ?なまえね、えほんよりみんながおはなししてくれるほうがすきなの!」

そういえば話した事があるな、と兄達はそれぞれ心の中で思った
絵本より自分達の話のほうが好きだといわれてこれから毎晩彼女を寝かしつけるときはネタを探さなければならない
その為には自分たちのが絵本が必要なのかもしれない、と思う兄達だった


私の働いている本屋でよく泣いている子がいるんですよね笑
121219


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