ひぐらしの声を聞くと切なくなるよね
ひぐらしの声を聞くと切なくなる
そして思い出の中のあの子が蘇る
【ひぐらしの声を聞くと切なくなるよね】
「お姉ちゃんっ!」
その声を聞いたホットパンツは体をビクリとさせて振り返った
見れば小さな男の子が姉を見つけたのか駆け寄って行く
その男の子は途中で帽子を落としたのだろう、姉がやれやれといったようすで弟に帽子を被せてやると手を繋いでそのままその場を去っていく
ホットパンツはそれを見届けると自分も目的の場所に向かって歩き始めた
彼女がやってきたのは墓地だった
そして一つの墓に水をかけて花を添えると両手を合わせて目を閉じた
ここに眠っているのは彼女の弟だった
もう亡くなってから数十年経つ……
「ほっちゃん!」
声をかけられて振り向けば麦藁帽子を被ったなまえがいた
手を振ってやれば彼女はすぐにこちらへとやって来た
「なまえか、こんな所で何してるんだ?」
「ほっちゃんがここにはいってくのみたの」
「そうか…」
「……だれかしんじゃったの?」
なまえが悲しそうな顔で聞いてきた
5歳の彼女にはわからないと思っていたのだが、そういえば彼女の両親も亡くなっていたか…と思い出す
ホットパンツは頷いて口を開いた
「…ここには私の弟が眠っているんだ」
「ほっちゃんのおとうと?」
「あぁ…数十年前に亡くなったんだ……川で遊んでいたら溺れてな」
自分は10歳を超えていただろうか?
弟を連れて川に遊びに来た、流れも緩やかだったし何も事故など起こることはないと思っていた
それで調子に乗って深い所に行ってしまった、それが弟を亡くした原因だった
誘ったのは自分なのに…深いところに入ったのは弟だった
「ほっちゃんのおとうとはあのおそらからほっちゃんのことみてるよ!」
「…どうだろうな」
「なまえのおとーさんとおかーさんもなまえのことみてるってじょながいってた、だからほっちゃんのおとうともみてるよ!」
「…そうか」
そうだといいな、とホットパンツは薄く笑った
それになまえも満面の笑みで笑う
「ほっちゃんさみしい?」
「……いや、なまえという"妹"ができたからな。寂しくないさ」
「なまえも!おとーさんとおかーさんいないけど、ほっちゃんいるからさみしくないよ!」
えへへっと笑うなまえはホットパンツに抱きつく
この子供はどうしてこんなにも愛おしく思わせるのだろうか?
ホットパンツは彼女の手を繋いで立ち上がって墓地から出た
「てめぇなまえ!こんな所にいやがったのか!!」
「じゃいろ!」
墓地から出たところで聞こえたのは息を切らしたジャイロとその後を追いかけてきたジョニィだった
そう、なまえはこの二人に遊んでもらっていたのだが途中でホットパンツを見つけてそっちに行ってしまったのだ
「かくれんぼは公園の中だけっつっただろうが!墓地にまできやがって」
「じゃいろ…ごめんね…」
「いーや許さねぇ、罰としておたくのクマのぬいぐるみ寄こせ!」
「くまさんはだめー」
ジャイロに抱き上げられて小さく舌を出すなまえ
そんな妹の行動を見て笑うジョニィをホットパンツは見つめた
弟が生きていたら彼ぐらいの年齢だろうか、と
こうしてこの二人と友達になっていたのだろうか…
「ちゅーしてやる!」
「やめろジャイロ・ツェペリ!!なまえが汚れるっ!!」
「ぐえっ!!」
腹を思い切り殴られてジャイロはその場に蹲る
ホットパンツはなまえを地面に降ろし、ジョニィを見つめた
「な、何?」
「…君はいい妹を持ったな、大切にするんだぞ」
「あ、うん…」
ポカンとするジョニィにホットパンツは微笑んだ
なんか子育てっぽくない話だったなぁw
120805