子供って犬とか猫とか好きだよね


家の前でチョークを使ってコンクリートにらくがきをしていたなまえ
ふと、床に大きな影が映り彼女は上を見上げた


【子供って犬とか猫とか好きだよね】


見上げてみれば一人の大きな男がこちらを見ていた
見たことない男になまえは思わず怯えたような目をして彼を見つめた

「君は…もしかしてなまえか?」
「う、ん……」

名前を聞かれてなまえは頷いた
その時家から承太郎が出てきたので彼女は慌てて承太郎の後ろに隠れて足にしがみついた

「なまえ?どうした…?」
「じょうたろ!へんなおじさんがいる!」
「おじさん…?……あぁアヴドゥルか、久しぶりだな」

なまえが指を指す方向を見ればどうやら承太郎の知り合いであるらしかった
へんなおじさん、と言われてアヴドゥルは苦笑していた
承太郎はなまえの背中を押して前へとやる

「なまえ…アヴドゥルだ。怪しいやつじゃない、挨拶しろ」
「…こんにちは」
「ふっ、偉いな」

優しく微笑むアヴドゥルになまえはほっとしたような表情になった
アヴドゥルはなまえの両親の知り合いで彼女が生まれる前に占いで女の子だ、と結果を出したりもしたのだ
彼はその両親の墓参りに行ったついでに家に寄ったのだそうだ

「よかったら上がるか?」
「いや…実は"アレ"がいなくなったのでな、すぐに探さねばならん」
「アレ?」
「……イギーだ」

あぁ、と承太郎は納得したように頷いた
どうやらかなり探すのに苦戦しているようなので承太郎は一緒に探すことにした
もちろんなまえも一緒に行くと聞かなかったので連れて行くことになった


* * *

「いいかなまえ、イギーってのは犬なんだ」
「わんわん!?」
「あぁ…だけど触るんじゃねぇぞ噛まれるからな」

承太郎にそう教えられてうん、と頷いたなまえ
だが彼女は犬という事を聞いてわくわくしていた
向こうを探してくる、という承太郎になまえは彼と反対の方向へと進んだ

「いぎー!いぎー!!」

名前を呼んで草むらの中へと進んでいくなまえ
だが犬どころか猫さえも出てこない、その時彼女が何かを踏んでしまい思わず下を見た
どうやら眠っていた1匹の犬の尻尾を踏んでしまったらしい
踏まれたことによってその犬は不機嫌そうに目を開けてなまえを睨みつけた

(いってぇーな!このクソがき!)
「わんわんだ!しっぽふんでごめんね」
(ケッ!きたねー手で触んじゃねぇよ)

よしよしと頭を撫でるなまえにイギーは彼女の手を振り払うかのように頭を振った
そしてそのままどこかへ去ろうとしたのだがなまえは自分の後を追いかけていた

(なんだよ!)
「わんわん、いぎーしらない?」
(あぁ?俺の事探してんのか?てか犬に聞いてどうすんだよ!しゃべれるのかよ)
「あぶおじさんがさがしてるの」

まだ話を続けるなまえを無視して去ろうとするのだが彼女はとうとうイギーを抱き上げた

(何しやがるんだ!!)
「わんわんいっしょにいぎーさがすのてつだって!」
(やなこった!つーかもう見つけてんだよ!!降ろせって!)

噛み付いてやろうかとイギーは考えた
そうでもしない限り彼女は離してくれなさそうだったからだ
その時なまえが大声を上げたのでイギーは体をビクリとさせた

(いきなり大声出すなよ!)
「わんわん、あれがいぎーかな?」
(だからイギーは俺だって……!!)

呆れたような顔をしながらなまえが見つめる方向を見てギョッとさせた
彼女のいる方向には確かに犬がいる、それも自分よりも大きな犬だ
だが明らかに飼われているという犬ではなく野良犬だった、それも凶暴そうな
なまえは少しずつ犬に近づいていく

(お、おいよせ!噛まれたら死ぬぞ!!)
「わんわんがいぎー?あぶおじさんがさがしてるよ」
「グウゥゥ!!」

近づいてくるなまえに警戒して野良犬は彼女に向かって吠えた
それに驚いたなまえは泣きそうになりながら体を震わせる
所詮は子供だやれやれ、とイギーはため息をつくと彼女の腕から抜け出して前に立つ

「わんわん…?」
(やれやれ…危ないからそこにいろよお嬢ちゃん)
「ガウッ!!!」

イギーに襲い掛かる野良犬だが、それをあっさりと交わして野良犬の背後に回る
そしてイギーは大きく口を開けて野良犬の尻尾に噛み付いた
噛み付かれた野良犬は驚いてその場から走り出した

「なまえ!!」
「!じょうたろっ!!」

なまえの声を聞きつけた承太郎がやってきた
彼の姿を見て安心したのかなまえはそのまま泣きついて承太郎に抱きついた
妹の頭を撫でてやりふと、前を見ればずっと探していたイギーがそこにいた

「イギーじゃねぇか…」
「え?わんわんがいぎーなの?」
「あぁこいつが俺達が探していたイギーだ…なまえが見つけたんだな」

偉いぞ、と承太郎に誉められてなまえは嬉しそうに微笑んだ

「いぎーね、さっきなまえのことたすけてくれたの!」
「そうか…」
「いぎーいいこだよ、なまえいぎーだいすき」
(けっ…犬ならなんでもいいくせによ)

自分を見つめてニコニコと微笑むなまえにイギーはふっ、と笑った

(まぁ犬好きの子供なら…俺も嫌いじゃねぇけどよ)



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イギーとアヴドゥル初登場ですw
120703


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