第7話 Man-hating woman


――ロクサーヌ可愛いね
――好きだ…ロクサーヌ


「っ!?」

ベッドから起き上がったロクサーヌは思わず時計を見た
時刻はすでに朝の7時を過ぎていた
ボサボサになった髪の毛を掻きながら小さく舌打ちをした

「…嫌なこと思い出した…最悪な朝だな」

遠い記憶が蘇る
彼女の中に思い出される男の顔に益々機嫌が悪くなる


* * *

「おはようございますロクサーヌちゃん」
「おはよう」

いつもの時間帯に出勤してきたナナはキッチンにいたロクサーヌに声をかける
ふと彼女を見ればおいしそうなストロベリーサンデーを作っているところだった
顔を明るくさせてナナは鞄を置くとロクサーヌに近づいた

「おいしそうですね…」
「…あのおっさんのことだからな、美味そうに作らねぇと文句言われそうだし」
「おはよ〜あ!いい匂いっ!」

同じく出勤してきたエイミーもキッチンに広がる甘い匂いに瞳を輝かせた
すぐに近づいてまだ途中のストロベリーサンデーに手を伸ばそうとするがロクサーヌに叩かれる

「いいじゃんちょっとぐらい〜」
「駄目だ!まだ途中なんだから…それよりさっさと店開ける準備始めろよ」

ナナとエイミーはキッチンから出て準備を始めた
客席のカーテンをエイミーは開けて、ナナは入り口の看板を変える為に扉を開けたと同時に腕を引かれた

「おはようナナ」

ダンテはナナを抱きしめて彼女の額にキスをする
一瞬何が起こったのかわからなかった彼女だがダンテに抱きしめられて、キスもされたのだと理解するとまた顔を赤くさせた

「ダ、ダンテさんっ!おはようございます…」
「さっそく食いに来たぜ」
「え…」
「ストロベリーサンデー。あのお嬢さんの事だ、もう作ってんだろ?」

楽しみだ、とダンテは口の端を上げてそのまま店に入っていく
その後を追いかけるナナ
ダンテはそのままカウンターに座ると奥の方を見た
やはりロクサーヌが今ストロベリーサンデーを作っている所だった

「おはようおじ様〜」
「あぁ、今日も元気だな」
「サンデー食べに来たんでしょ〜?でもロクサーヌちゃんまだ途中みたいだよ?」
「できるまで待つさ、なんせこれからタダで毎日食えるんだからな」

ニッコリと微笑むダンテにエイミーも同じように笑った
その時奥からナナがケーキを持って現れダンテの前に置いた
彼は頼んでいないケーキが現れて不思議そうな顔で彼女を見た

「昨日のお礼です…よかったら食べてください」
「気にするな、俺も俺であの悪魔に用があったしな」
「でも助けていただきましたから…」
「お礼なら…こっちがいいけどな」

ナナの顎を掴んで親指で柔らかい彼女の唇を押す
男性にそんな所を触れられたことがなかった彼女はまた頬を赤くさせた

「はい、待たせたねおっさん。それ食ってとっとと帰りな」
「……相変わらず空気が読めないお嬢さんだな」

残念そうな顔をするダンテはナナの顎から手を離す
そして目の前に大きな音を立てて置かれたストロベリーサンデーを見てニヤリと笑った
ロクサーヌもどうだ、と言わんばかりの顔で口の端を上げていた
ナナもエイミーもおいしそう、と声を上げた

「すっご〜いロクサーヌちゃん!!」
「見た目も綺麗ですし…すごくおいしそうですっ!」
「さすがだな、俺の期待通りだぜ」
「よりによってアンタみたいなおっさんに食わせることになるとはね…」

スプーンを手にとってダンテはサンデーを味わう
子供のように美味い、と何度も言うダンテにナナは微笑んだ
ロクサーヌもかすかにだが微笑んでいた

「俺に食ってもらえるってのは名誉なことだぜ?」
「ふん…どうだかね」
「そういえばロクサーヌちゃんって彼氏いないの〜?」

何気なく聞いたエイミーの言葉にロクサーヌはピクッと体が動いた
その動きをダンテは見逃さなかった

「……いねぇよ、そんなの…男なんて……」
「ロクサーヌちゃん?」
「あ……いや、一人のが好きなんだよアタシは」

そのままロクサーヌは奥へと引っ込んでしまった
残されたエイミーは首を傾げる、それはナナも同じだった
明らかに様子が変だった

「ロクサーヌちゃんって口悪いけど美人だし料理もできるし…彼氏いないって本当かな〜?」
「うーん…"今"はいないって事じゃないでしょうか?過去にはいたと思いますよ」
「いたけど酷い目に合わされたって感じだな」
「え…?」

ずっと黙っていたダンテが口を開いた
すでにサンデーはなくなっている、近くにあったナプキンでダンテは己の口元を拭いた
どういうことですか、とナナは尋ねる

「俺に突っかかっては来るが…それでも距離をとってるんだよな……まるで絶対に触れられまいとしているみたいに」
「…男性が怖いって事ですか?」
「……さぁな、過去に何があったのかはあのお嬢さんに聞いてみないとわからねぇだろうしな」

再び奥からロクサーヌがやって来た
彼女は小さな鞄を持っていた

「ちょっと…買出しに行って来る」
「え…私が行きますよ?」
「いいって…おっさんはナナにいてもらいたいんだろうし…気晴らしにな」

最後に浮かべた笑みはどこか寂しそうだった
それを見たナナは何も言えず、ロクサーヌの背中を見送った


Man-hating woman
(ロクサーヌちゃん…本当に大丈夫でしょうか?)


120802


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