第6話 Reunion with an old friend


「久しぶりだな〜」

被っていた帽子を少し上にあげてエイミーは懐かしい町を眺めた
デザイナーになるために半年前にこの街を出たのだが久しぶりの休暇を利用して帰ってきたのだ
彼女が当然向かうのは自分が働いていた店だ
なんの連絡もしていなかったので自分が現れたら彼女たちはどんな反応をするだろうか?
一人は連絡しなかった事に怒りながらも嬉しそうに口を上げて、もう一人は優しい笑顔で迎えてくれるだろう
想像したら何だか嬉しくなって顔の緩みが収まらなかった

「あれ…?おじ様?」

角を曲がったときに見慣れた赤いコートを見つけた
声をかけようかと思ったのだがエイミーは目を見開くとすぐに物陰に隠れた
ダンテに一人の女性が近づいてきたからだ、銀色の髪の色をしたおかっぱの髪型にきわどい服を着ていた
彼女が来るとダンテは口の端を上げて一緒に歩き出した
二人を見送ってからエイミーは信じられないような顔をした

「ナナちゃん…じゃないよね〜?今の誰なんだろ…?」


* * *

「ありがとうございましたー」

最後の客を見送ってからナナは食べた皿とカップを取りにいく
キッチンから出てきたロクサーヌが店内に客がいないことに気がついて店の外に出て行くとCLOSEの看板に変えた
看板を変えているところを見ていたナナが声をかける

「ロクサーヌちゃん、もうお店閉めるんですか?」
「あぁ…ほらもうすぐ祭りがあるだろ?満月の日にみんなでバカみたいに騒ぐやつ」
「そういえばそうでしたね」
「それの準備で客足もさっぱりなんだよなー祭りが終わればまたいつものように人が戻ってくるだろうけど…祭りが終わるまでは早めに店閉めることにした」

今月は厳しいかもな、と苦笑するロクサーヌにナナも同じように笑った

「じゃあまだ時間ありますし、新しいケーキでも考えてみます?」
「お、そうだな……」

二人がキッチンへと行こうとした時店の扉が開かれる音がした
そちらを見ればエイミーがそこに立っていたので二人は目を見開いた

「ナナちゃん、ロクサーヌちゃん久しぶり〜」
「エイミーちゃん!?」
「エイミー!?なんでお前がここにいるんだよ!!」
「休みがとれたから帰ってきたの〜」

えへ、と笑うエイミーの元へ二人は駆け寄ると3人で抱きしめあった
連絡ぐらいしろよ、とロクサーヌはエイミーの頭をぐりぐりと押した。どこか嬉しそうに
ナナもうっすらと涙を浮かべていた


「どうなんだ向こうでの暮らしはもう慣れたか?」

ケーキと紅茶を出して店の端っこのテーブルに3人は座ってエイミーの近況を聞き始めた
紅茶を一口飲んだエイミーは少し暗い顔をした
やはりデザイナーになることは簡単ではないのだ、今まで何度も怒られたしやめたくなることも多々あった

「けど…パリに着いた時不安もあったけど、これがキャロルが行こうとした世界なんだって思ったらすごくワクワクしたよ〜…キャロルは見れなかったけどアタシが見ることができた。キャロルの分まで頑張ろうって思えるよ〜」

かつて自分を色々と助けてくれたキャロルの事を思い出しエイミーは目を閉じた
彼女が生きていたらパリに着いた時出迎えてくれただろうか
しかし彼女はもういない、彼女が叶えられなかった夢を自分が叶えるのだ
エイミーの頭にロクサーヌが手を置いた

「まぁ、せっかくの休みなんだし…しばらくはアタシの家に泊まっていいからさ……ゆっくり休みなよ」
「ロクサーヌちゃん…大好き〜〜!!!」

ロクサーヌに抱きつくエイミーの様子にナナは3人で働いていた頃を思い出して懐かしそうに目を細めた
店の時計が鳴り始めてそれに気づいたナナはゆっくりと立ち上がった

「ごめんなさい、そろそろ夕飯の買出しにいってきます」
「あ、そうだな…また明日な」
「はい、エイミーちゃんまた私の家にも遊びに来てくださいね」
「!…あ、うん…」

頭を下げてナナは店を出て行く
彼女が出て行ったのを確認したエイミーはロクサーヌに声をかけた

「ねぇロクサーヌちゃん〜…ナナちゃんって今幸せ?」
「はぁ?なんだよそれ、幸せに決まってんだろ…ダンテのやつこの間アタシの前で堂々とキスしやがったんだから」
「……さっきね……おじ様が違う女の人といるの見たんだけど……」
「仕事仲間じゃねぇの?レディさんとか…」
「それがレディさんじゃなくて〜…こうセクシーな感じの人だったんだけど…」
「え……?」


Reunion with an old friend
(今日はダンテさんの好きなピザにしましょう)


131203


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