第5話 I do not let go again


力強く抱きしめられてこの温もりは随分と久しぶりなように感じた
もう二度と感じられないと思っていた、会えないと思っていた
だけどどこかでダンテが迎えに来ることは予想していた
彼がずっと騙されているわけないのだから


「きゃっ!」

抱きしめられていた体制から突然抱き上げられてダンテはそのまま窓から飛び出した
あちこちの屋根を飛び渡り、落ちそうになるその感覚にナナは固く目を閉じてダンテの太い首にしっかりとしがみついた
一体自分はどこに連れて行かれるのだろうか?
ようやく一つの教会の屋根の上に止まった事がわかるとそっとナナは目を開けてダンテを見つめた
相変わらず彼の瞳は怒ったままだ、何も言う事ができない

「手紙読んだぞ」
「ぁ……」
「…出て行くなら証拠は全部消さないとな」

鍵をかけておいた箱の存在を思い出して痛いミスをしてしまった事にナナは自分の失敗に唇を噛んだ
ダンテはそのまま屋根のギリギリまで来ると抱いているナナを屋根の届かない場所へ、宙へと手を伸ばした
しがみつくこともできず暴れれば一気に下へと落ちてしまうこの状況に恐怖を感じた

「ダ、ダンテさ……」
「答えろ、どうして俺に相談しなかったんだ?」
「それは……」
「お前の事だ。俺に迷惑かけたくないとかそんなんだろ……くだらない、お前なりの気遣いのつもりなんだろうが全く迷惑だ」

強い風が下から押し寄せる、悲鳴を上げるナナだがダンテは屋根の上に降ろそうとしなかった

「なぁナナ…お前にとって俺は何だ?」
「え……」
「俺たちは夫婦じゃないのか?悩み事ってのは夫婦で解決するもんじゃないのか……それとも俺には悪魔の血が流れてるから相談できない「違いますっ!!!」

大きな声でナナは否定した
うっすらと目に涙を浮かべながら首を横に振った

「そんなんじゃないです……ダンテさんはとても優しい人です!人間以上に優しくて温かくて…悪魔とかそんなの関係ないですっ!!…ただあのまま街にいたらダンテさんやロクサーヌちゃんにも迷惑がかかって……、それにダンテさんの事を知りもしないで悪魔悪魔って言われるのが嫌で悔しくて…」

再び大きな風吹いた、だがナナが再び悲鳴を上げる事はなかった
今彼女はダンテに力強く抱きしめられているからだ
腕の中で泣くナナ、彼女の後頭部を引き寄せて自分の胸に押さえつける
彼女が自分を思ってくれた行動はもちろん嬉しいのだが犠牲にするような行動は許せなかった
守っていくと誓った、彼女の両親にも


「はぁ…ダンテさん…」

近くのモーテルへと移動してきた二人は身体を重ねた
何度もダンテはナナの身体にキスをして愛を囁いた
二度と離さない、と……


* * *

数日後
一軒の酒場にやってきたダンテは数人で飲んでいる男たちのテーブルへとやってきた
突然現れたダンテの姿に男たちは驚いていた

「ナナが迷惑かけたな……だがその件に関しては俺にも責任はある。だから俺たち夫婦で責任は取らせてもらうつもりだ」
「な……」
「またナナに嫌がらせしてみろ……俺が許さないぜ」

鋭い瞳に見つめられて男たちは何も言えなくなり、ナナに対しての嫌がらせはしなくなった


事務所へと戻ってきたナナは早速散らかっている所を掃除していた
たった数日開けただけなのにもうこんなにも散らかるなんてある意味才能かもしれない
だが、掃除をするのが何故か楽しく嬉しくも感じた
ちょうどその時ダンテが帰ってきた、笑顔で彼女は迎える

「おかえりなさい」
「ただいまbaby」

大きく両手を広げるダンテの胸へとナナは飛び込む
彼女を抱きとめるとダンテは口を開いた

「ナナ…これからは何かあったらすぐに俺に相談しろよ。迷惑かかるとかそんなのはなしだ」
「……はい」
「hmm…今の間が気になるな……まぁお仕置きされてもいいんなら別にいいけどな」

モーテルでの事を思い出してナナは顔を真っ赤にさせた


I do not let go again
(お前は俺がずっと守っていくからな)


131108


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