第1話 Dandy nice man
日付が変わってしまった真夜中
辺りは静まり返っていて人一人も歩いていない路地裏を歩く一人の少女
彼女もさすがのこの雰囲気に慌てたのか少し早歩きで家へと急ぐ
「あ〜やだやだ!オバケでも出たら堪んないぃ〜」
ブーツの音を鳴らしながら角を曲がったときだった
彼女の目の前にこの世のものとは思えない存在が現れた
悪魔だ
声を引きつらせて後ろへと後ずさりをする彼女を悪魔は追い詰めていく
壁へと追い詰められた彼女は震えながら嫌、と小さく声を上げた
悪魔は鎌を振り上げた。彼女は目を硬く閉じる
バンバンバンッ!!!
「え……?」
いつまでもこない痛みと、それと同時に聞こえた銃声に目を開けた
すると悪魔は自分の目の前で倒れておりそれはやがて砂となって消えた
一体何が起こったのか?彼女が目の前を見れば一人の男が立っていた
銀色の髪にアイスブルーの瞳…赤いコートを身に纏った男がいた
「あ、貴方は…?」
彼女が尋ねるが男は口の端を上げて自分の人差し指を自分の口元へと持っていった
そして彼はそのまま去っていく
「か、かっこいいっっ〜〜〜〜!!!!!」
* * *
「ありがとうございました」
会計を済ませた客を店の入り口まで見送るとすぐにその客のテーブルを片付ける
「ナナ、そこ片付けたら休憩にしようか」
「はい」
カウンターにいた女が声をかける
ナナは返事をすると急いでそこを片付けて店の扉にCLOSEと看板を変える
ここの喫茶店はあまり人通りの少ない所に立っていた
店の女主人―ロクサーヌはそれなりに経営ができればいい、という理由でここに店を建てた
彼女と友人でもあるナナは一緒に店を手伝っていた
毎日楽しく働いておりとても幸せだった
「そういやエイミーのやつまだ来てねぇな」
「あ、本当ですね…今日は試作ケーキ作る日だから絶対に来るとは言ってたんですけど…何かあったんでしょうか?」
「どうせ寝坊だろ」
ロクサーヌが呆れて言った時だった
店の扉が勢い開かれてナナは驚いてそちらを見た
「エイミーちゃん」
「おいエイミー!もう少し静かに開けろよ!」
「き、昨日…悪魔に襲われたのっ!!!」
「え!?」
悪魔に襲われたという言葉に二人は驚いた顔をした
とりあえず走ってきた彼女を落ち着かせようと椅子に座らせる
「エイミーどっか怪我はしてないのか?」
「うん、一つもしてない…でね!ここからが本題なのっ!!」
「何か別にあるんですか?」
首を傾げて尋ねるナナにうん、と力強く頷く
「悪魔に襲われかけたアタシなんだけどぉ…どうやって助かったと思う!?」
「もったいぶらないでさっさと話せよ」
「んふふ……何と素敵なダンディおじ様が助けてくれたの!!!」
「だんでぃおじさま……?」
昨日の事を思い出したのかエイミーはまたきゃーと一人で騒ぎ始める
ロクサーヌは呆れてため息をついた
「まぁ…怪我がねぇんなら別にいいわ」
「えぇ〜ロクサーヌちゃんもっと聞いてヨ〜」
「お前は遅刻してきたんだぞ、こっちはさっさと新作ケーキ作りてぇんだ!さっさと手伝えよ」
「ケチ〜!ナナちゃんに聞いてもらうからいいよーだ!」
べぇと舌を出すエイミーと眉間に皺を寄せるロクサーヌ、そんな二人を宥めるナナだった
Dandy nice man
(なんて名前なんだろ〜あぁー気になるぅ!!)
(エイミーちゃんクリームが零れてます…)
始まりました4ダンテ連載、4ダンテで連載書くのは何年ぶり?くらいだと思われます。どこまで続くかわかりませんがお付き合い頂けたら嬉しいです
120722