第27話 Feeling that I will be honest


街中の人間が突然現れた女神の像に驚いて次々と逃げていく
そんな中ロクサーヌとエイミーも店を飛び出してナナの家へと向かっていた
彼女の家の付近に着いたエイミーは像を見上げて口を開く

「ロクサーヌちゃん…あれ、何なのかな?」
「さぁな…ただ良くねぇもんだってことはわかる」
「……ナナちゃん、あそこにいたりしないよね〜?」

ドサッ!!

突然二人の背後から物音が聞こえた
ゴミ袋の上に人が倒れていた、どうやら落ちてきたらしい
二人はすぐに駆け寄ってその人物の姿を見て目を見開いた

「ダンテ…!?」
「おじ様…どうしたの!?」

声をかけるが返事はない、ダンテは目を閉じていた
まるで死んでしまったかのように


* * *

――暗い……どこまでも落ちていくような気がします……

真っ暗な空間の中を落ちて行く感覚だけを味わうナナ
自分が今、上を向いているのか下を向いているのかさえわからない



「ここは……?」

気がつけば真っ白な雪景色の中に自分はいた
ゆっくりと立ち上がって周りを見渡せば少し街から離れた場所に自分がいることがわかった
街に行けば何かわかるだろうかと足を踏み出した時だった

キキーッ!!ドンッ!!!!

ハンドル操作が聞かなくなったらしい車が壁にぶつかった
その時女性と一人の女の子が外に放り投げだされた。女性はゆっくりと身体を起こした

「ママ……?」

ナナは驚いていた、母親は小さな身体を抱き起こす
すると次は車の中から父親が痛みをこらえながら出てきた

「パパ…?これは……あの時の記憶?」

3人の家族を悪魔が囲う、父親が拳銃で悪魔を何匹か倒すのだがやがて弾がつきて胸を貫かれた

――ぐ…ふっ
――あなたっ!!
「パパっ!!」

ナナも思わず叫んだ、次に母親が小さいナナを庇って腹部を貫かれる
逃げるように言われたナナだったが悪魔達が両親を囲んで二人に取り付く、そして赤い目をした両親が立ち上がってナナに向かってきた
ガクガクと身体を震わせながら涙を流すナナの体が宙を舞い地面に叩きつけられるとそのまま気を失う
止めを刺そうと迫る悪魔達の元へとナナは思わず駆け寄ろうとしたのだが銃声が鳴り響いた
振り返ればそこには若き頃のダンテが立っていた

「ダン…テ…さん…?」
――そんなお嬢ちゃん相手にしても退屈だろ?俺が相手してやるぜ
――…臭うぞ…その血はスパーダの血…っ!!!
――へぇ…親父を知ってるのか?
――スパーダの血族は殺すっっ!!!!

襲い掛かってくる両親の攻撃を交わす
自分が気を失っている間に起こっていた出来事をこのときナナは初めて知った
悪魔に取り付かれた両親から自分を守るためにダンテは両親を仕方なく殺したのだ

――私の先祖は…昔…スパーダに協力していたと言われている……
――何…!?
――人間界を救おうとする彼の為に…知恵を貸し、力を貸したそうだ……
――……だから悪魔に狙われてるのか
――……頼む、ナナはその血を引く娘だ。ここでその血を途絶えさせてはいけない……娘を守ってやってくれ…頼む……

父親の最後の願いを聞いたダンテは彼の目を閉じてやると気を失っているナナを抱き上げて街へと向かっていく

「ダンテさん……」

ふと、また風景が変わったことに気がついた
後ろを振り返れば両親の墓を作ったらしいダンテがそこにいた
ナナはゆっくりと彼の元へと近づく

――どうしたらいいんだ?アンタ達の娘は全然食事もとってくれねぇし、笑ってもくれねぇんだ
「……」
――まぁ、あんたらがいなくなった事が寂しいんだろうけどよ。真実を話すべきか迷ってんだ
「……」
――じゃあな、俺はそろそろ行くぜ。大切な人形を探しに行くんでな


――ナナは親戚に預けた、その方があんたらも安心じゃねぇか?
――冗談だ、このまま別れるつもりはないぜ。あんた等の娘が欲しいからな、指輪を渡しといた。あれはあんまり悪魔を寄せ付けないしナナもそんな簡単に死なない
――大きくなったら嫁にもらうぜ。それで一生守っていく

墓の前で両親に話しかけるダンテの姿にナナは涙が零れた
彼には半分悪魔の血が確かに流れている、だけど両親の墓を立ててくれたり自分をずっと守ってきてくれたのだ
人を守り、優しくしてくれる悪魔だっているのだ

――ナナ…
「パパ…ママ…!?」

両親が現れてナナは二人の側に駆け寄る
涙を零しながら彼女は口を開いた

「パパ…ママ…私はどうしたらいいんです?」
――もう気づいているんだろう?自分がどうすべきかを
「え…」
――今の貴方なら女神の像の暴走を止めることができるはず
――そして…ダンテに力を貸してあげなさい
「ダンテさんに…力を……?」
――呼んであげるだけでいい、そうすれば彼は"目を覚ます"
――さぁ、頑張りなさい……そして自分の気持ちに素直になるのよ

両親は優しく微笑むと姿を消した
キョロキョロと周りを見渡すが二人の姿はどこにもなかった
再び真っ暗な空間がナナを襲う
だが彼女は手を重ねて祈るように目を閉じた

「お願い…ダンテさん、私を助けて…っ!」


Feeling that I will be honest
(パパ、ママ…ありがとう)


120907


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