第21話 Truth that I must talk sometime
ベッドの上でぐっすりと眠るダンテ
寝返りを打てば背中に誰かが触れる感触を感じる
小さいけれどとても温かいその体温に再び眠気に襲われる
「お兄ちゃん、起きて下さい」
「…なんだナナ…早起きだな」
「もう10時ですよー早く起きないと夜ねむれなくなります」
まるで母親のように起こすナナにダンテは口の端を上げる
こんな風に誰かに起こされる生活なんて何年ぶりだろうか?
いつまでも揺さぶり続ける彼女にわかったよ、と答えて体を起こす
いつも上半身で寝ている彼の裸を見たナナは急いでシャツを彼に渡す
受け取ったダンテが彼女を見てみれば顔を横に逸らしている
「なんだよ、親父さんだってこういう格好してただろ?」
「…パパはちゃんとバスローブ着てました……」
確かにあの父親は紳士的な感じだったなとダンテは思った
まだ小さいと思っていたのに男性の裸にはやはり何か感じるような年齢だったのだ
嫌われたりしても嫌だったのでダンテはおとなしくシャツを着た
彼が着たのを確認するとナナはそのまま部屋の入り口へと向かうとクルッと回ってこちらを見る
「朝ごはん作ったんです!一緒に食べようです!」
「あぁ…」
階段を降りて先に行くナナの後をダンテも追いかけた
一緒に暮らすようになってから遠慮ばかりしていたナナも積極的になった
料理も掃除も家でしていたらしく自分から進んでやるようになった
だがやはり子供な部分もある。今日作った朝ごはんもスクランブルエッグなのだが焦げていたり塩を使いすぎて辛くなったりしていた
それでもダンテは嫌な顔をせずに全部食べた
「おいしかったです?」
「あぁ…いい奥さんになれるぜ」
「えへへ…」
照れくさそうに笑うナナにダンテは目を細める
一緒に暮らそうと切り出して数日経つが、彼女は最近泣かなくなった
可愛い笑顔を見せて毎日を一緒に過ごしている
その笑顔をこの先ずっと自分が守ってやりたいと強く思っていた
「ねぇお兄ちゃん…」
「なんだ?」
「……お兄ちゃんのおしごとって…悪魔をたおすこと?」
後片付けをしていたナナが自分に尋ねてきた
ダンテはしばらく考えていたがあぁ、と返事をした
それを聞いたナナは寂しそうに眉を下げて口を開いた
「やめて…ほしいです……」
「どうしてだ?」
「……お兄ちゃんも悪魔に殺されたらいやです……わたし、ひとりぼっちになっちゃう…」
自分にも悪魔の血が流れているからちょっとやそっとじゃ死なないと答えたら彼女はどんな反応をするだろうか?
無邪気な子供みたいに「じゃあ死なないんだね!?」と目を輝かせるか、悪魔という単語を聞いて恐怖に満ちた顔をするか
彼女はきっと後者だろう
ナナに拒絶はされたくなかった
「俺は…死なない。約束する」
「……ほんとです?」
「あぁ…」
小さな頭に手を置いて優しく撫でてやればナナは微笑んだ
いつか彼女に話さなくてはならない時が来るのだろう
自分にも悪魔の血が流れていることを
とりつかれていたとはいえナナの両親を殺したのは自分だということも
一方
街中を歩いていたレディは紙袋を持っていた
その中にはたくさんのお菓子が入っており、ナナにあげようと買ったのだ
きっと彼女は喜んでくれる
その時、レディの目に1枚のチラシが目に入った
それを剥がしてじっくりと内容を読んでため息をつくと再び歩き出した
ダンテの事務所へと
Truth that I must talk sometime
(隠してごめんな、いつかちゃんと話すから)
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