第19話 Precious doll I got from my father


いつも通りの朝が来る
ダンテはいつもの椅子に腰掛けて行儀悪く足を上げて雑誌を読んでいた
そしてナナは赤いソファーにちょこんと座り目の前に差し出されたピザとにらめっこしている状態だった
今日こそは食べろ、とダンテに言われたので彼女は言われたとおりに…というわけにもいかず一口もせずにピザとにらみ合っていたのだ
その時事務所の扉が開かれて見て見ればレディがやって来た

「ハーイナナ…あら?食事中?」
「いや、全然食わないんだ」
「ピザばっかり毎日出されても嫌よね?」

レディに言われるがナナは顔を横に向けた
そんな彼女の前にレディは紙袋を置いて中を取り出す、それにつられてナナがそちらを向けばおいしそうなパンが差し出された

「近くのベーカリーで買ってきたの。チキンとほうれん草のフォカッチャサンド、こっちはメロンパンよ甘いの好き?クッキーもあるわよ」

優しい笑みで言うレディにナナはおずおずと手を伸ばしてパンを一つ手に取ると食べ始める
それを見たレディとダンテはホッとした
ここに来てから彼女は全然食べなかったからだ

「ダンテわかった?ピザばっかりじゃなくてこういうのを買ってあげないと駄目なのよ」
「わかったよ…女ってのは飯に関してはうるさいな」
「おいしい……」
「そう?よかったわ」

小さな頭をレディは優しく撫でる
撫でられたことで思い出すのは大好きな父親と母親の事だ
そしてナナは何かを思い出したのかキョロキョロと辺りを見回す
それに気がついたレディが彼女に尋ねた

「どうかしたの?」
「お人形……」
「ん?」
「…くまのお人形…パパに買ってもらったんです……どこ…いっちゃったのかな…」

ちらりとレディはダンテに目線を送った
彼は知らないといった様子で首を横に振った

「代わりに私が買ってあげようか?」
「いや…あれはパパが買ってくれたんです!あのお人形じゃなきゃ駄目ですっ…!!」

大声を上げて言うナナにレディは少々驚いていた
彼女も大きな声を上げた後、我に返ると膝を抱えて顔を俯かせてしまった
これ以上はもうしゃべってくれないかもしれない
レディは仕事がある、と彼女の頭を撫でて立ち上がるとダンテに小声で話しかけた

「見に覚えはないの?」
「……さぁな」
「よほど大切な物だったみたいよ」


* * *

それから数時間後
いつの間にか眠っていたらしいナナは起き上がって周りを見渡す
すると自分の頭付近に1枚の紙が置かれていた
その内容を見てみるとダンテからだった

――少し出かけてくる、絶対に外には出るなよ。いい子でお留守番してなbaby

いつも彼が座っている椅子を見れば確かに彼はいない
壁にかけられている赤いコートもリベリオンもなかった
ナナは起き上がって事務所の玄関へと向かうと扉を開けていつもの通り階段に座り込んだ
そしてふと思い出したのは人形の事だった
悪魔に襲われたあの場所へ行けば父親から貰った人形があるかもしれない
ナナは立ち上がるとそのまま事務所を飛び出した


その姿を数匹の悪魔が見下ろしていたとも知らずに――……


Precious doll I got from my father
(パパがくれたお人形…絶対に見つけるからっ!)


120824


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