第18話 Children and adults suffering from crying


赤いソファーの上に寝かされていたナナは寝返りを打ってから目をゆっくりと開けた
まず最初に映ったのは見慣れない天井、自分の部屋ではないことに気がついた
そこからゆっくりと顔を横に向ければ二人の人物が写った

「……で、どうするのあの子。あなた子供育てられるの?」
「だからお前を呼んだんだろ」
「うーん……あら、目が覚めたみたいね」

ナナがこちらを見ていることに気がついたレディは微笑んだ
微笑まれたが、やはり知らない人間なので警戒して顔を俯かせてしまった
レディとダンテは彼女に近づきその小さな頭を撫でた

「一応手当てはしてあるわ、体に傷も残らないしよかったわね」
「……ここ、どこ?」
「あのお兄さんの家よ、汚いでしょー」
「……パパとママは?」

不安そうに瞳を揺らしながら周りを見るナナ
事情はダンテから聞いていたのでレディは言葉に詰まってしまった
まだ小さい子供が親の死を聞いて受け入れられる事はできないだろう

「しばらく遠くに行くってよ…その間俺が面倒を任されたって訳だ」
「……」
「……よろしくな、俺はダンテだ」

黙り込んでしまったナナに手を差し出す
が、彼女は彼の手を握らずに再びシーツに身を包んで体を寝かせた
ダンテの気遣いを小さな彼女は信じただろうか?気を使っていっているということはバレていないだろうか?
とにかくしばらくはダンテの所で生活するしかないだろう
これから先の事は後で考えるしかなかった


* * *

シャワーを浴び終えたダンテが上半身裸でタオルを頭に被せて出てきた
そして机の上に置かれているピザが手をつけられていないことに気がついてため息をついた
玄関の方を見れば階段に座り込んでいる小さな背中が見える
ダンテの事務所に来た次の日からナナはほぼ1日中ああやって両親が迎えに来ることを信じて待っていた
今更親は死んでしまった、と言えなかった
ダンテは彼女に近づくと小さな頭に手を乗せてやる

「冷えるだろ?もう中に入りなbaby」
「…もうちょっと…います……」
「駄目だ、風邪引いたらお前のパパに怒られちまう」

言い聞かせるように言うとナナは立ち上がって素直に事務所の中へと入っていく
落ち込んだ背中にダンテは胸を痛ませながら扉を閉めた
そしてソファーに座り込んだナナの元へピザを持ってきてやり隣に座る
一切れ取ると彼女の口元に持っていく

「食えよ、上手いぜ」
「……いりません…」
「何か食べろよ、じゃないと身体壊すぜ…それとも食べたいもんでもあるのか?」

気を使って話しかけてくれるダンテにナナは首を振った
彼女はそのままソファーから降りて2階へと上がって行った
子供の扱いなど正直わからない
イライラしながらもダンテはため息をついた
どうすれば彼女は笑ってくれるのだろう、元気になるのだろうか


* * *

しばらく時間を置いてからダンテはナナの様子を見に行った
用意したベッドの中に彼女はいた、眠っているようだった
ゆっくりと近づいてベッドに座り彼女の顔を覗きこんだ
眠っているはずなのに、涙が零れていた

「パパ……ママ……っ」

――ママ……バージル……


寂しそうに両親を呼ぶ声
幼い日の自分の姿と彼女の今の姿が被った
ダンテはシーツにもぐりこんでナナの小さな体を優しく抱きしめて眠りについた


Children and adults suffering from crying
(君の笑顔が見たいんだ…その為なら何でもする。―だからどうか泣かないで)


120822


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