第16話 Her past with him


「おはよ〜」
「あぁ…おはよう」

いつもの出勤時間帯にエイミーが仕事場にやって来た
奥でグラスを拭いていたロクサーヌが彼女に微笑む

「話は大体聞いたよ、もう大丈夫なのか?」
「うん、悪魔に取り付かれちゃうなんて情けないよね〜…おじ様とナナちゃんに謝らなくちゃ…って……」

エイミーはすぐに異変に気がついた
そうだ、朝いつも出勤すればロクサーヌが挨拶してくれて続いてナナも挨拶をしてくれるはずだ
その彼女がいないことに気がついた

「ナナなら休むってさ」
「……そっかー」
「……あのさ、ダンテがあの伝説のスパーダの息子だってのは本当なのか?」
「うん……アタシに取り付いていた悪魔がそう言ってた…それにおじ様にいくつものナイフが刺さって一杯血が出ても死ななかったし……半分は悪魔の血が流れてるんだよ」

そうか、とロクサーヌは再び手を動かし始める

「なぁエイミー…」
「ん?」
「……ダンテっていつからナナの事好きになったんだと思う?」

ロクサーヌの質問にエイミーは首を傾げる
そしてうーんと考え込んだ

「あれじゃない、アタシがおじ様に助けてもらった次の日にナナちゃんも助けてもらったんでしょ?その時に一目ぼれしたとか?」
「……確かにそうかもしれないけどなんてゆうか…時々懐かしそうに見るっていうか……あー!!」

突然彼女は大きな声を上げてグラスを置いた
そしてエプロンを脱ぎ捨てると表の看板をCLOSEにした

「ロ、ロクサーヌちゃん!?」
「ダンテに直接聞きに行くぞエイミー、今日は店は閉める!!」
「えぇ〜!?いいの〜!!?」
「店長のアタシがいいって言ってんだ!行くぞ!!」



* * *

街から少し外れた場所にある一軒のバー
ダンテはそこにいた、一人で酒を飲んで楽しんでいた

「あら、こっちに姿を見せるなんて久しぶりじゃない」

後ろから声をかけてきたのは黒い髪のショートカットの女性だった
彼女はサングラスを外してダンテに微笑むが彼はちらりと見ると再び目線を外した
ふぅ、とため息をつくと女性はそのまま彼の隣に座る

「可愛い天使ちゃんがいる店はどうしたの?今日は休み?」
「いや……そうじゃない」
「ふーん……久々に見たけど随分と綺麗になっていたわね、あの子」
「あぁ…所で何か用か?レディ」
「別に、貴方がこの店に入っていくのが見えたからちょっと気になっただけ」

そうか、と答えてダンテはグラスを持ち酒を飲む
どこか様子のおかしいダンテにレディは更に聞く

「ダンテ……あの子と何かあった?」
「……拒絶されたな」
「え……貴方、過去の事何も話してないの?」

何も答えないダンテにレディは呆れたようにため息をついた

「でもそうね…話すのは難しいかもしれないわね」
「見つけた!!ダンテ」

突然聞こえた声にダンテとレディは振り向いた
そこにはロクサーヌとエイミーが立っていた
ダンテは驚いたように二人を見つめた

「お前…何でここに?」
「アンタは特徴があるからな…聞き込めばすぐに見つけられる」
「そうか…で、何の用だ?」
「ナナが今日店に来てない」

ピクッ、とダンテの手が反応した
それを聞いていたレディも眉を潜める

「アンタさ…ナナの事何か知ってるんだろ?今だって話してたじゃねぇか…過去に何かあったんだろ…」
「それにあたしに取り付いていた悪魔はどうしてナナちゃんを狙ったのかも気になるー……」
「……聞かれたんなら話さなくちゃ駄目ね、ダンテ?」
「……hmm、そうだな」

ダンテは立ち上がって勘定を済ませると自分の事務所へ場所を移すことになった
ロクサーヌとエイミー、そしてレディも一緒に行くことになった


ダンテの事務所はとても綺麗とは言えなかった
彼の机の上には食べ終えたピザの箱がたくさん積んである、床も埃まみれだった
適当にかけろ、と言われてそれぞれが行く
ダンテは自分専用の椅子に座ると机に足を乗せた
そして一息つくと口を開いた

「俺とナナは随分昔に会っているんだ……俺もまだ若くてちょうどデビルハンターを始めた頃だ、ナナも子供だった」
「じゃあもう10年以上になるってこと〜?」
「そうだな……出会ったのはナナとその両親が悪魔に襲われていたんだ。そして……」

ダンテは喉まで出掛かっていた言葉を一旦飲み込み
また口を開いた

「俺は……ナナの両親を殺したんだ」


Her past with him
(君から最愛の人を奪った、ごめんな)


120820


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -