第15話 The man is the devil


「お疲れ様です」
「お疲れ、また明日なー」

後片付けを終えてナナはロクサーヌに挨拶をして店を出た
店を出たところで壁にもたれかかっていたダンテが片手を上げてもたれるのをやめた

「遅くまで大変だなナナ」
「ダンテさん、どうしたんです?」
「夜道は危ないだろ?送っていってやろうかと思ってな」

送ってくれるという言葉を聞いてナナは申し訳なさそうな顔をした
そして手に持っている袋をダンテに見せる

「ごめんなさいダンテさん…私エイミーちゃんの様子が気になるから家に寄っていこうと思いまして」
「あぁ…なら俺も行ってやるよ」
「え!?い、いいですよ!!」
「もう決めた」

一度決まったらやめない、と言った様子でダンテは先に歩き出す
つき合わせてしまってもいいのだろうか、と迷ったが恐らく彼は帰らないだろう
ナナも彼の後ろを歩き出す
この際だから何故自分にやたらと纏わりつくのか聞いてみる機会かもしれない

「ダンテさん」
「んー?」
「……その、私のどこを好きになったんですか…?」
「全部…っていう答えは駄目か?」
「ちょっと…ずるいような気がします……」

上目遣いで見るナナにダンテは笑う
そしてどこか遠くを見るような瞳で答えた

「……最近好きになったって訳じゃないんだぜ?」
「え……」
「昔から……「あれ…エイミーちゃん!?」

ダンテの言葉を遮ってナナが声を出す
彼が振り返ってみればエイミーがそこに立っていた
ダンテは手を振るのだが彼女は何も反応せずにそのまま走り去った
慌ててナナは後を追いかけてダンテも同じように追いかける


走っていくエイミーは今は使われていない建物の中へと入っていく
同じように後を追いかけるナナとダンテ
だが悪魔の気配を感じていたダンテはすぐにナナを自分の背後へと隠した

「いらっしゃい〜ナナちゃん、おじ様〜」
「エイミーちゃん…?」
「これから楽しい楽しいゲームをして遊ぼうね〜」

笑っていたエイミーの瞳が赤いことに二人は気がついた
ダンテは銃を構えてエイミーに向けた

「悪魔に隙を与えちまったか、お嬢ちゃん」
「おじ様何言ってるの〜?アタシに向かって撃ったらおじ様の大好きな
ナナちゃんが悲しむよ〜?」
「ダ、ダンテさん…やめて下さい」

銃を構えるダンテの太い二の腕を掴んでナナは彼に言う
彼は渋々と銃を降ろした
お利口だねぇ〜とエイミーはパチパチと手を数回叩いた
その瞬間ダンテは壁へと吹き飛ばされる、彼がぶつかった事で近くにあった置物などが割れる音が響いた

「ダンテさんっ!!」
「よそ見してていいの〜?次はナナちゃんだよ〜」
「え……」

近くのテーブルにあったいくつもの大きなはさみが空中に浮かび上がりそれはナナへと向いていた
あれがスピードがついて自分に刺されば最悪死んでしまうかもしれない
だけど体が動かない
大きなはさみがスピードをつけて彼女に向かっていく、恐ろしさに目を固く閉じた

サグッサクッグサッ!!!

「ぁ……」

いつまでも来ない痛みに目を開けてみれば見慣れた赤いコートが映った
ダンテが自分を庇ってくれたのだ
彼の胸にはいくつものはさみが刺さり血が出ていた

「ぐっ…!!」
「ダンテさんっ!!!」

刺さっているはさみが更に奥へ進もうと動く
ナナはエイミーに向かって叫んだ

「エイミーちゃん!!もうやめてくださいっ!!ダンテさんが…ダンテさんが死んでしまいますっ!!!」
「あははははっ!!大丈夫だよ〜おじ様は"その程度"では死なないから」
「何を言ってるんです…?」
「あれれ〜?ナナちゃんは何も知らないんだぁ〜じゃあいい機会だから教えてあげるー……おじ様はねあの伝説のスパーダの息子…つまりおじ様は悪魔と人間の間に生まれた子なんだよ」
「あ、くま……」

スパーダの話は聞いたことがあった、昔人間の為に世界を救った悪魔の話を
それの息子がダンテだということは知らなかった
だがそれ以前にダンテの中に半分悪魔の血が流れていることに驚きを隠せなかった
自分の両親を殺した悪魔の血が彼に流れている

はさみが音を立てて地面に落ちた
ダンテは立ち上がってエイミーを睨んだ

「やっぱりそのぐらいじゃ死なないよねーじゃあ次はもっと大きいので行こうか〜おじ様はナナちゃんを守りきれるのかな〜??」
「!!?」

エイミーの背後に何十本ものナイフが浮かび上がった
それはまるで軍隊の合図で訓練されているかのように一斉に二人に向かって構え、ものすごいスピードで二人に向かっていた
ダンテはナナを抱きしめて地面に倒れこんだ、彼女も固く目を閉じてダンテの服を力強く掴んだ
彼が自分を庇って背中に何本も突き刺さる音が聞こえる
やがてそれも聞こえなくなり、ダンテは動かなかった
それを見ていたエイミーに取り付いていた悪魔は彼女から離れる、とりつかれていたエイミーは悪魔が離れたことによってそのまま気を失ってしまった
悪魔はそのまま二人に近づいていく、様子を覗き込めば恐ろしい瞳で自分を見るナナの姿が目に入った

「ダンテは死んだ、次はお前だ」
「っ…!?」

鋭い手を振り上げたその時だった
ダンテの体から溢れる力に圧倒されて悪魔はそのまま吹き飛んでしまう
そう、ダンテが人間の姿ではなく悪魔の姿になっていたのだ
彼はナナの上から退くとそのまま悪魔の元へと飛びリベリオンで止めを刺した

「悪いがナナには触れさせない、指一本でも触れたら許さない」
「ぐ…がぁ…っ!!」

叫び声を上げて悪魔はそのまま消えた
ダンテは悪魔の姿からいつもの人間の姿へと戻った
そのまま呆然となって座り込んでいるナナの元へと近づいて触れようとしたのだが彼女に手を振り払われた

「ぁ……」
「……帰るか、あのお嬢ちゃんの家まで案内してくれ。俺が運ぶ」
「……はい」

気を失ったエイミーを抱き上げて歩き出すダンテの後をナナは着いて行く
ずっと二人は無言だった


The man is the devil
(悪魔は許せません……)


エイミー編終わり?次はいよいよヒロインの過去で私が書きたかった部分でもあります!
120819


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -