第13話 Chasing the back of her


「はいできた〜」

先程までボロボロだった人形がわずか数時間で元通りになった
人形の服も彼女オリジナルのデザインに変えられてより綺麗に見えた
目を輝かせてエイミーは人形を受け取りじっくりと見つめた

「ありがとうお姉さん!」
「キャロルって言うのあたし〜貴方は?」
「エイミー…」
「エイミーか〜可愛い名前だね〜」

優しく頭を撫でてくれるキャロルにエイミーは照れくさそうに微笑んだ
その時壁にかかっていた時計が時間を知らせる、すでに夕方の5時でエイミーは帰らなければならなかった
だけどもっとキャロルの服を見ていたかったし帰りたくなかった
そんなエイミーの態度に気がついたのかキャロルは再び彼女の頭を軽くポンと叩いた

「また遊びにおいでよ〜私いつでもここにいるからさ〜」
「!……うんっ!!」


それからエイミーは学校が終わるとすぐにキャロルの家へと向かった
彼女は毎日家にいて服や人形を作っていた
自分で考えたオリジナルのデザイン、それがとても可愛くできていてエイミーはとても惹かれた
惹かれたのはデザインだけではないだろう……


「エイミーちゃんはさぁ〜学校のお友達とかと遊ばないの〜?」
「……うん、私友達いないから……」
「……どうして〜?」
「……学校の友達が好きだっていうものを好きになれなくて…私だけいつもみんなと違うものを好きになるの。それが変だってみんないじめる」

自分でも話していていじめられた日々を思い出すエイミー
表情はとても暗かった
話を聞いていたキャロルが口を開いた

「人と違うのは変じゃなくて個性よ、みんな同じものが好きだったらおもしろくないよ〜」
「キャロル……」
「エイミーの立派な個性なんだから、大事にしなよ〜」

温かい言葉にエイミーは涙がボロボロと零れたそんな彼女に微笑んでキャロルは近くにあった布で涙を拭ってやる


それからエイミーはキャロルに教えられたとおりに自分の個性を貫いた
髪型を変えて服装も変えた。キャロルがデザインしてくれた服を着るようになった
最初は反感を買っていたのだが一部の人間からはエイミーの個性を貫き通す姿を見て認めるものも出てきた


「ねぇキャロル〜」
「どうしたのエイミー?」
「ここに置いてあった服とかどうしたの?それになんかダンボールが一杯あるし…」

ある日
学校での課題が忙しかったためしばらく来れなかったエイミーはキャロルの家に久々に来て気がついた
部屋が片付いており、ダンボールがたくさん詰んであった
少し寂しそうな顔をしてキャロルは口を開いた

「エイミー…あたしの服ね、有名デザイナーに認められてね……パリに行くことになったのー……」
「パリ…!?い、いつ!!?」
「…明日ー……」
「そ、そんな…」

がっくりと肩を落とすエイミー
パリなんていつでも会おうと思って会いに行ける距離ではなかった
下手すればこれが彼女との最後なのかもしれない
だが顔を俯かせていたエイミーにキャロルは1枚の髪を渡した
そこには新しい住所先と電話番号が書かれている
キャロルはニッコリと笑った

「これで一生の別れってわけじゃないでしょ〜?」
「キャロル……っ」
「……明日船で行くの、見送りに来てねエイミー」
「うん…っ!」

エイミーは泣きながらキャロルに抱きついた


* * *

港には多くの人間が来ていた
みんな誰かを見送りに来ているのだろう、エイミーもその内の一人だ

「見送りありがと〜エイミー」
「キャロル……アタシね、アタシもキャロルみたいになる!」
「え…!?」
「キャロルと同じデザイナーになるよ!それから自分の個性をずっと貫き通すからね!」
「……パリで待ってるー!!」

キャロルは笑顔で答え船に乗り旅立った
エイミーは力強い瞳で船が見えなくなるまでずっと見送っていた


* * *

それから数日後
エイミーは学校を終えてから家にいつもどおり帰宅した

(キャロル…もうパリに着いたかな?)

後で電話でもしようか、と考えたときだった
テレビから音が聞こえてそちらを見てみれば煙が出て舟の半分が沈んでいる映像が写っていた
エイミーはそれに釘付けになった

『えー緊急ニュースです!!パリ行きのアーヴィング号が悪魔に襲われました!!今の所乗客乗員での生存者はいないということです!!船の乗客のリストが出ましたっ!!えー繰り返します……』

乗客リスト
――ナタリー
――コブ
――ジョセフ
――クリスティ
――アーノルド
――キャロル
――ミント


――キャロル

――キャロル


エイミーはそのまま呆然と立ち尽くしていた


Chasing the back of her
(人と違うのは変じゃなくて個性よーだからエイミー…)


120813


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -