第12話 Only one in the world


昔の私は今みたいなしゃべり方でもなくて、個性的な服も着ていなくて
とても地味な女の子だった



「やっぱりこっちの人形のが可愛いよ」
「えー」
「ねぇエイミーちゃんはどう思う?」

教室の中で3人の女の子がそれぞれ手に持っている人形を見せ合っている
その時流行していた動物の人形だった
一人の女の子が教室の隅っこの方で本を読んでいるエイミーに声をかけるのだが彼女は答えずにそっぽを向いてしまった
すぐに3人はヒソヒソを話しはじめる

「何あの子」
「答えてくれてもいいのにねー」

ワザとらしく大きな声で言う彼女達をエイミーは気にしなかった
彼女にとってはどの人形も興味がなかったためどうでもよかったのだ

エイミーは当時から変わっていた
女の子達が興味を抱いているものにまったく興味がなく、逆に彼女達がまったく興味がないものにエイミーは惹かれていたのだ
自分はみんなとは違う、とエイミー自身も思っていた
だがそれがいじめの引き金となってしまう


「エイミー、はい日本のお人形だよ」
「ありがとうおばあちゃん」

優しく微笑む祖母から人形を受け取るエイミー
祖母は日本で暮らしているため時々こうやって日本のおもちゃをエイミーによくプレゼントしていた
着物を着て綺麗に着飾られている人形に彼女は目を輝かせる
とても変わっていて近所の子供たちは誰一人持っていない、満足感が得られた


だがある日
人形がクラスメイトによって壊されていた、それが先程の店に現れた客の女達だ
ショックで言葉を失っているエイミーに彼女達は鼻で笑った

「変な人形だからー直しといてあげたよー」
「すっげぇ不細工!あんたとそっくりでよかったじゃん!!」

人と好きなものが違うだけでどうしてこんなにも差別を受けなければならないのか
エイミーには理解できなかった


学校から帰る途中でエイミーは鞄から壊された人形を取り出した
このまま家に持って帰っても仕方がない、どこかに捨ててしまおうと
だが横から手が伸びて人形を取り上げられた。驚いてそちらを見れば個性的なファッションをした女性がいた

「いいお人形ね〜日本の?」
「う、うん……」
「壊れちゃってるじゃん…直してあげるわ〜」
「え…?」

先に歩いていく女性をエイミーは着いて行くべきか迷ったが、彼女にどこか惹かれてしまい着いて行った
小さな建物の中に入れば家の中には個性的な服がいくつもあった
キョロキョロと周りを見渡すエイミー、女性はそのまま椅子に座ると裁縫道具を取り出す

「まずは服から直さないとねぇ〜綺麗にしてあげる〜」
「……これ、お姉さんが作ったの?」
「ん?そうだよ〜」

女性は人形を机において立ち上がり一着の服を取ってエイミーに見せる
今までに見たことがない服にエイミーは惹かれた

「私自身がデザインした世界で一着だけの服、どう〜?素敵でしょ?」
「……うんっ!」

エイミーはニッコリと笑った


Only one in the world
(これが私が変わるきっかけを与えてくれた人だ)


120811


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