第10話 Goodbye my loved one


「どこに行くんだ?ナナ」

店の裏口から出て行こうとしたナナは身体をビクリとさせた
横を見れば腕を組んだダンテがこちらを見ていた
彼は先程まで店の中にいたはずなのに一体いつの間に移動してきたのか?
ダンテはそのままナナの方へと歩き出す

「え…っと…ロクサーヌちゃんが心配なのでちょっと探してきます」
「俺も行く」
「え!?いいですよ、ダンテさんはお店でゆっくりして下さい!」
「ナナの側にいたいんだ、いいだろ?」

そう言われてしまえば何も言えなくなった
ダンテはニッと笑うと先に歩き出したのでナナも慌てて後を追いかける
先に歩き出す彼の瞳は鋭くなっており、すでに何かを察知しているようだった


* * *

「う…?」

ゆっくりと瞳を開けたロクサーヌの視界に写ったのは随分と高い場所にある天井
首をゆっくりと横に動かしてみれば鉄パイプなどがありどこかの倉庫にいるようだった
何故ここにいるのかとふと思い出したとき、ロバートが現れた
彼の瞳は赤くなっている

「あんた…!」
「気がついたようだねロクサーヌ……じゃあ始めようか」

彼女の太股を撫でる彼の腹に思い切り蹴りを入れた
ロバートは蹴られた腹を片手で撫でるとニヤリと笑いロクサーヌの首を絞めた

「く…がっ…!」
「いいねいいね…抵抗されると余計に燃えるし殺す価値もあるよっ…!!」
「っ…!!」

首を絞める彼の手を掴んで離させようとするのだがビクともしない
段々と意識が遠のいていく
自分もここまでなのか、と段々と抵抗をしなくなった

(エイミー…ナナ…ごめん……)

だが次の瞬間銃声が聞こえてロバートの体も吹き飛んだ
解放されたロクサーヌは思い切り咳き込んだ

「諦めるなんてお前らしくないんじゃないか?」
「…ダンテ!?」
「ロクサーヌちゃんっ!!」

予想もしていなかった人物が現れてロクサーヌは目を見開いた
ナナはすぐにロクサーヌに駆け寄って体を起こしてやる

「大丈夫です!?どこも怪我してませんか!?」
「あぁ……ナナっ!!」
「え…」

突然ロクサーヌが大声を上げたので振り返ってみれば
完全に悪魔の姿をしたロバートが現れた
ナナもその姿を見て目を見開くとそのまま動けなくなってしまった
が、二人の前にダンテが立ち彼は背中に背負っていた大きな剣を手に取った

「ダンテさん…?」
「ナナ、ロクサーヌを連れて倉庫から出てろ」
「え…でもダンテさんは!?」
「俺はコイツを片付ける…心配するな、すぐに片付くさ」

余裕たっぷりでナナに向けてウインクをするダンテ
彼女は言われたとおりにロクサーヌに手を貸して先に倉庫から出た
何故だろうか?彼の言葉は信用できるし、彼なら大丈夫な気がした

「逃がさんぞオオオオオッッッ!!!!」
「hmm…ロクサーヌも趣味が悪いな……悪魔の相手をできるのは俺ぐらいしかいないだろ?」
「シネエエエエエエェェェッッ!!!!」

ダンテに向かって悪魔はものすごいスピードで突っ込んできた
だが彼はそれをあっさりと交わす、悪魔はその勢いで壁に突っ込み瓦礫が崩れた
辺りに砂埃が舞う、その中からまた悪魔はダンテに向かって突っ込んできた彼はそのまま悪魔に腹部を貫かれて壁に叩きつけられた

「愚かな人間め……」
「…やるな」
「貴様何故っ!?…ギャアアアアアァァァッッ!!!!」

死んだと思われていたダンテが生きていることに悪魔は驚いていた
そして彼は手に持っていた大剣――リベリオンを自分の腹部を貫いている物に向かって思い切り刺した。痛みに悪魔は彼の腹部から刺したものを抜き取る、解放されたダンテはそのまま悪魔に突っ込んでいき止めを刺した

「貴様…人間ではないな…」
「……半分はな」

背中にリベリオンを背負うとダンテはその場を後にした



「凄い音がしましたけど…ダンテさん、大丈夫なんでしょうか?」
「……」

心配そうに倉庫の方を見つめるナナとロクサーヌ
もしかしたら彼は自分のせいで命を落としたのではないだろうか、とロクサーヌは唇を噛んだ
だがその時ナナが声を上げる、見れば余裕な表情を浮かべたダンテがいたのだ

「ダンテさんっ!」
「ダンテ…!無事だったのか…?」
「あぁ…死んでた方がよかったか?」
「そ、そんなんじゃないよっ!」

無傷で帰ってきたダンテにナナもロクサーヌもほっ、としていた
そして半分崩壊している倉庫の方を見てロクサーヌは口を開いた

「……アイツ悪魔だったんだね、死んだの?」
「……あぁ、ちゃんと止めは刺してきた」
「……そう」

ロバートが死んだと聞いてロクサーヌはその場に跪いた
そして大声で笑い出した

「あはははっ…ホント男を見る目ないよねアタシって!寄りにもよって悪魔に騙されて付き合ってたなんてさ!」
「ロクサーヌちゃん…」
「まぁいいや、せーせーするわ!男なんていらねぇよ」
「……泣いてます、ロクサーヌちゃん」

ナナに言われて自分の頬をゆっくりと手で撫でてみれば涙が伝っていた

「あれ…なんで…」
「ロバートは最初から悪魔だった訳じゃない、人間だった」
「え…?」
「…お前を愛してたさ、だけどな…男ってのはどうしても好きになった女を抱きたいって思っちまうんだ……だけどお前の嫌がることをしたくない…そこに付込んだ悪魔に乗っ取られちまったんだ」
「なんで…そんな事…」

ダンテはポケットからペンダントを取り出すとロクサーヌに向けて投げた
彼女はそれを受け取り中身を見て目を見開いた
そこにはロクサーヌの写真が入っていたのだ

「アイツの死体から出てきたんだ…悪魔に乗っ取られてもお前を愛する気持ちはなくなってなかったんだよ」
「……なんだよ、こんなの…今更っ…!!」

優しかったころのロバートとの思い出が蘇る
ロクサーヌはペンダントを握り締めて大粒の涙を流した

「嫌い…っ、あんな…やつ…っ!」
「ダメですよロクサーヌちゃん……その涙は大好きだったって証拠です」
「ロバート……ごめんっ…!」


* * *

「ロクサーヌちゃんにそんな事があったんだね〜…」

数日後店番ばかりさせられて機嫌を悪くしていたエイミーに事情を説明した
それを聞いた彼女も納得していた
あれからロクサーヌはしばらく店を休んで2階に引きこもっていた

「お店閉めたりしないよね…」
「それは大丈夫だと思います」
「…そうだ!そろそろ休憩にしない!?お茶飲もうよー」
「ダメだ」

きっぱりと聞こえた否定の声にナナとエイミーがそちらを見た
いつもの店のエプロンをつけたロクサーヌがそこに立っていたのだ

「そのまま3時間ぐらいサボるつもりだろエイミー!」
「ロ、ロクサーヌちゃん!もう平気なの〜?」
「当たり前だ、いつまでも落ち込んでいられないしな……それにうるさい常連もすぐに来るだろうしな」

店の扉が開かれた、そこに現れたのはダンテだった
ナナがテーブルに案内しようと近づけばすぐに抱きしめられる
それを見てロクサーヌは優しく微笑んでいた


Goodbye my loved one
(ありがとうロバート…アタシは前に進んでいくから)


ロクサーヌ編?終わり
120808


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -