第9話 She has a dream to man


――やめてっ…こんなの嫌よっ!!
――いずれはこうなるんだ、とっとと足開けよ

強くならなければと思った
自分が"女"だから、力が弱いから強姦された
だったら口調も変えて男に負けないぐらいの力をつけなければ……



買い物から帰ってきて数時間後
ロクサーヌは奥の椅子に座りエプロンを外していた
その目には決意を込めた力強い瞳が見られた

「ロクサーヌちゃん、どこか出かけるんですか?」
「……あぁ、ちょっとね」

客が食べた食器を下げてきたナナはロクサーヌが鞄に色々と詰めているのを見つけた
その時に偶然見えたのが催涙スプレーだった
普通出かけるのにそんな物を持つだろうか?

「おっさんまだいんの?」
「あ、はい…でもそろそろ帰ろうかなって言ってました」
「ふーん……」

ちらりとダンテの方に目をやればエイミーとしゃべっている
先程あの男のコートにしがみついて泣いたことを思い出す

――俺は好きな女を泣かせない

「……いい男に好かれたねナナ」
「え?」
「……本物の男だよ、あのおっさんは…心配はいらないだろうけど油断するなよ」
「ロクサーヌちゃん?」
「…ちょっと出かけてくるわ、いつもの時間帯になったら店閉めて帰っていいから」
「そんなに遅くまで帰って来ないんですか?どこに行くんです?」

心配になって声をかけるがロクサーヌは微笑むとそのまま出て行ってしまった
彼女の背中を黙って見送ることしかできなかった



* * *

「それじゃあ…」
「また電話してね」

彼女を家まで送ったロバートはそのまま暗い路地を歩き出す
その時彼の目の前にロクサーヌが現れる
目を見開かせていたロバートはくっ、と笑った

「まさかこんな所で君に会えるとはね…久しぶりだねロクサーヌ」
「……あれ、彼女?」
「あぁ…他にも何人かいるがその内の一人だ」
「最低だな…アンタ」
「何とでも言ってくれよ…彼女は君と違って簡単に足を開いてくれるしね」
「っ…!」

ギリリッと音がなるほど歯を噛むロクサーヌ
こんな最低な男に自分の処女を奪われたというのか、恋人としての時間も奪われてしまったのか
悔しそうな顔をする彼女を見ながらロバートは彼女に詰め寄る

「それで?僕の前に現れたのはどうしてだ?」
「……一言アンタに言ってやろうと思って、そんな事してなんのメリットがあるの?」
「メリット?」
「男として恥ずかしくないのかよっ!!?」

大きな声で怒鳴るロクサーヌをきょとんとして見ていたロバートは大声で笑い出した
可笑しそうに笑っている彼を黙って睨み続ける

「あははっ…何を言い出すかと思えば……君は男に夢を抱いてるようだね?優しくて頼りになるのが男だとでも思っているのか?……違うよロクサーヌ」

表情が突然変わった
それはまるで何かに取りつかれたかのような表情だった

「所詮男は身体目的なんだよ…その女とヤりたいがために優しくしたり頼りになる男だと思わせるようにする生き物なんだよ…女は大概それで落ちるだろ?君もそうだったじゃないかロクサーヌ」
「っ…!!」
「くくっ…せっかく久々に会えたんだ。抱いてあげるよロクサーヌ」
「やめ…っ!!」

人間とは思えないスピードでロバートはロクサーヌの腹を殴った
殴られたロクサーヌはそのまま彼の腕の中に倒れこんだ
彼は人間ではない…!?

「君を抱いた後…殺してやるよ、ロクサーヌ」

ロバートは悪魔へと姿を変えた


She has a dream to man
(誰か…助けて……ナナ、おっさん…)


120805


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