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目を覚まして一番に視界に写ったのが同じように隣で眠るナナの姿だった
上半身を惜しみなく曝け出してすやすやと安心したように眠る彼女の姿にクリスは口の端を上げ目を細めて微笑んだ
左手で彼女の右頬を優しく撫でてそのまま唇へとキスをする
昨日はナナと初めて愛し合った日、とても幸せで胸が一杯になっていた
もう一度眠りにつこうと彼女を抱きしめた時だった

ピンポーン

「ん……?」

インターホンが鳴るがどうせ業者か何かだろうとクリスは無視することに決めた
だが再びインターホンが鳴らされた挙句扉を叩かれる音が聞こえた
このままではナナが目覚めてしまう。クリスは身体を起こしてベッドから出ると側に落ちていたズボンを履いて適当にシャツを着る。そして肌を曝け出している彼女にシーツをかけてやると玄関へと向かった

「誰だ?」
「兄さん!」
「クレア!?」

目の前に現れたポニーテールの少女にクリスは驚いたように目を見開いた、そして抱きついてきた妹を抱きしめると笑顔になって同じように抱きしめ返してやる
彼女はクリスの妹のクレアだ、大学が休みなのでそれを利用してクリスに会いに来たのだ

「上がっていい?」
「!え、あ……後で外で会わないか?」
「どうして?散らかってるのなら気にしないわ、むしろ私が片付けてあげる」
「あ、ちょっとクレア…!!」

ずかずかと部屋へと上がりこむクレアを止める事ができなかった
部屋へと入った彼女は相変わらずね、と部屋の中をぐるりと見回してベッドへと視線が釘付けになってしまった
ようやくナナもうっすらと瞳を開けて自分の状況を忘れてしまったのか肌をクレアの前へと曝け出し眠そうにしながら目を擦る

「クリス……?」
「ナナ!!」
「に、兄さん!誰なのこの人は!?」

慌ててベッドへと駆け寄りクリスは自分の上着を彼女にかけてやる
そこでようやくナナもクレアの存在に気がついて慌ててシーツをさらにかけた




「兄さんの彼女なのね」

事情を聞いたクレアはコーヒーを飲みながら納得したように答えた
彼女の反対側に座っているクリスは照れており、ナナは恥ずかしそうに申し訳なさそうにクレアに頭を下げた

「ごめんなさい…私クレアがいるってことに気づかなくて」
「全然いいわ、言わなかった兄さんが悪い」
「言おうとしたのにお前が勝手に上がるからだろ?」

仲良さそうに笑うレッドフィールド兄妹の姿にナナも目を細めた

「二人はいつから付き合ってるの?」

クレアからの質問にナナがえ、と…と答えようとしたがすぐにクリスが答えを返した

「つい最近だよ…俺が一目惚れしたんだ」
「わ、私も…大雨の中クリスが店に来てくれて一緒に花を店の中に運んでくれたの…その時にすごく頼りになってかっこいいな…って思ったの」
「……ふーん、両想いだったのね。羨ましい」

お互いに惚れている事に何だか恥ずかしくなってクリスとナナは照れくさそうに微笑みながらもお互いに手を握り締めた
クレアはやれやれといった感じで微笑むとそのまま椅子から立ち上がった

「じゃあ私はこれで」
「もう帰るのか?」
「兄さんの様子を見に来ただけだし…彼女がいるなら安心した。ナナ、兄さんの事よろしくね」
「えぇ…クレアまた遊びに来てね」

クレアは微笑むとそのまま部屋を出て行った

残されたクリスとナナはとりあえず部屋へと戻った
とりあえずマグカップを片付ける彼女にクリスは口を開いた

「驚かせてすまない…」
「あ、ううん…クレアは可愛い子ね」
「ありがとう…たった一人の大切な家族だからな」
「一人?…親は?」
「……死んだんだ、事故で」

聞いてはいけないことを聞いてしまった、とナナは思いクリスに謝った
だが彼は気にしなくていいと微笑んだ

「もう随分前だしな…」
「……そう」
「そういえばナナの両親は?店にはいないようだけど…」
「……いないわ、クリスと同じ」

私も随分前よ、とナナは微笑み返した
こんなにも自分達は境遇が似ているのかとクリスは改めて思った
そして彼女に近づくと優しく抱きしめた、抱きしめられてナナは彼の腕に優しく触れる

「悲しい思い出ばかりじゃなくて…これからは楽しい思い出を一杯作ろう」
「……うん」


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