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何の会話も無く車内は沈黙に包まれていた
何となくだがクリスがどこか怒っているようにナナは思えた
しかし居心地が悪いので身体をもじもじさせていた彼女は赤信号になったのを見計らって思い切って声をかけた

「優勝おめでとうクリス」
「…あぁ」
「…約束守ってくれて嬉しかったよ、せっかくだしお祝いしようか!何が食べたい?」

笑顔で言う彼女にクリスはふぅ、と深くため息をついた
やはり今までとどこか違う

「ドミニクにキスされたって?」
「!?…ぁ…」

知られてしまっていたドミニクとのキスの事
震える手で自分の唇に触れるとそのまま顔を横に逸らしてしまった
その様子にクリスは眉間に皺を寄せると彼女の背中に向けて言葉を続けた

「どうして言ってくれなかったんだ?」
「……言ったらクリスどうしてた?殴りに行ったでしょ…?」
「当たり前だ」

自分の女に手を出されて怒らない男などいない
当たり前なのだがこうしたクリスの真っ直ぐな性格は欠点でもあったりする
まだ若いのもある、感情のままに動く事もあって空軍では上司とぶつかり退役することにもなった
射撃大会でも殴っていれば問題になってS.T.A.R.Sを辞めざるを得なかったかもしれない

「だけどあの時…ナナが止めてくれなかったら…今頃君はドミニクの物になってたかもしれないな」
「クリス…」
「さっき奴に一発くらわせておいたから…もう君には手を出してこないだろう」
「……結局殴っちゃったのね」
「あぁ、射撃大会終わった後でな。君との約束は射撃大会までの事だ」

仕方ない人だ、とナナはくすっと笑った
やがて車が一つのアパートの前に止まった、そこはナナも見覚えのあるアパートだった
何故ならそこはクリスの家だからだ
クリスの家でお祝いをするのかとナナはそのまま彼に続いて車を降りた
ポケットから家の鍵を取り出して彼女を先に入れるとクリスも続いて中に入る、そして鍵を閉めると後ろからナナを力強く抱きしめた

「クリス……?」
「今夜は君を帰したくない」

そう言うとクリスはそのままナナの唇を塞いだ
昼間したときと同じような深くて長いキス、溶けてしまいそうな感覚に陥ってしまう
唇が離されるとクリスは唇が触れそうな距離で甘く囁く

「君が…ナナが欲しいんだ」
「クリス…!」

ナナは力強くクリスの首に手を回して抱きついた
すると彼はそのまま抱き上げて寝室へと彼女を連れて行った


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